28 出来立てのポップコーンはいかがですか!
「はーー、やっと聞こえなくなったな。」
「随分と熱狂的だったね。」
基地を出て歩く事数分。既にそこそこの距離を離れていたにも関わらずくーねを呼ぶ声は遠くまで聞こえていた。
「あんなに叫んだらゾンビくるだろうに馬鹿なのか?」
「あはは、それだけくーねたんちゃんが凄かったってこどじゃないかな?」
「うぅ、出発前に呼び出されて〆られそうになったんだぞ?助けてくれたことには感謝するけどそれとこれとは話は別。とか言ってさ。あそこ怖すぎ。」
歩きながら元凶のくーねを見るがぼーっと歩いていて特に反応はない。
こいつはいつもこんな感じなのでもう慣れたがいつもなにを考えてるんだろう?意外と何も考えてないのか?
「まあなんにせよ、これで先に進めるな」
「もうすぐ私の家だね!楽しみだな~」
「あの山なんだよな?」
「そうだよ~。まあどっちかというと山と山の間?なんだけどね。トンネル通ればすぐだよ!」
「トンネル・・・崩れてなきゃいいけどな」
それから歩く事数時間。エイタ達は漸くミカの家がある山へとたどり着いた。そして、
「ですよねー」
トンネルはしっかりと崩れていた。
「はやいよ!回収が早いよ!」
ミカがなんか喚いている。俺のせいじゃないからな。
「でも困ったな~。くーね、これなんとかできる?」
アホ毛をぴょこぴょこと揺らしながら手を顎に持っていき悩む素振りを見せるくーね。
「ん?ん~~~、出来ないことはないけど歩いてるときにまた崩れ落ちたことあるからな~」
やろうと思えばできるのか・・・てか崩れ落ちたことあるって大丈夫なのかそれ。
「まあ急ぐ旅でもないんだし、回っていくか」
「そうだね。今の私達なら登るも突っ切るも大して変わらないよ!」
ミカがハンドスコップで草を掻き分けながら進んでいく。
「二人ともなんだか変わったね?」
「え?」
くーねがぼそっとそんなことを言ってミカの後に続いていく。
俺たちが変わった?そんな変わったかな?
山を登り始めて数時間。日も傾きかけているころ。
「やっぱ山だとゾンビが居なくていいね。」
「その分動物や魔獣がいたけどな」
「もー、人型じゃないってだけでましでしょ?」
「それはそうだが・・・」
山はもともと人通りが少ない故にゾンビも少ない。が、その代わりに野生動物がいっぱいいる。そして動物が苦手な人がここに一人。
「なあくーね。怖いのは分かるが歩き辛いんだが。」
ふるふると震えながら俺の背中にしがみついてるくーね。
ただでさえ坂で、足場も悪いのでちょっとやめてほしい。
「うへぇ、これでもポニーのおかげで慣れて来てるんだよ?」
「わっふ!」
名前を呼ばれ喜んだポニーが尻尾を振りながら近づくにつれてくーねのしがみつく力が徐々に高まっていく。
「いたたたいたいいたい!このくだりもうやったって!」
「あ!みてみて!山頂が見えてきたよ!」
ハンドスコップで指した先には開けた空間とさびれた文字で”山頂”と書かれた看板。どうやら意外と早く登れたようだ。
「ほらくーね。山頂に着いたぞ。もう動物も出ないって。」
ぐおおおおお~~~~~
とかなんとか言った瞬間。どこか遠くから遠吠えのようなものが聞こえてきた。それも今まで聞いたことがない恐ろしい唸り声。
「・・・・・・・・・」
くーねのアホ毛がジグザクに震えている。最近気づいたんだがこの子のアホ毛は感情を表してるのかな?犬の尻尾か何かなのだろうか?
「わるい。」
「なんの鳴き声だろうね?クマかな?」
「クマの鳴き声ってあんな響くのか?」
「はっ、魔獣かも!」
くーねは魔獣相手なら平気なんだよな~。倒せば全部解決!って考えはちょっと脳筋すぎる気もするが、
「ただの野生動物の声にしてはデカすぎる気がするし、魔獣の可能性は大きいな。」
「ほっ、よかった魔獣か~」
俺から離れたくーねが胸に手を当て一息つく。普通逆だろ。
「ねぇ!あれ見て!」
見晴らしのいい山頂でミカがある一点を指す。その視線の先を追うとそこには、
「あれは、光か?いっぱい集まってるな。まさか集落?」
少し遠いがそこには確かに光が見えた。自然の光とは違い不自然にまとまった光はそこに人がいるのを知らせるかのように灯っている。
「あそこ!私の家の近くだよ!エイタ君!」
ミカが飛び跳ねながら報告してくる。ミカの家の周辺に明かりがあるなら家も家族も無事な可能性が高い。希望も見えてきてテンションが上がるのも無理はないだろう。
「よし!今日はここで休んで朝、日の出とともに出発するか!」
「それじゃご飯作るね!山頂で食べるご飯おいしいだろうな~」
「わーーい!」
ミカのご飯を食べた後は少し話をしてから交代で寝ることにした。
先にミカ達を寝かせたエイタは一人訓練に励んでいた。
くーねに出会って以降、教えてもらっていることもあって強くはなっているのは分かっているのだが。
(あいつには、手も足も出なかった・・・)
文字通りボコボコにされて、一度は地に伏した。リベンジも出来ずに。
(というよりやっぱ俺の体丈夫すぎない?)
そのボコボコにされたのはたった昨日なわけでってこれこの前も考えたな。
「やめだやめだ」
腰を落としいつの間にかスムーズに操作できるようになっていた核力を操り薪を燃やしていく。といっても俺の力じゃ炎を広げることは出来ないんだが。
心地よくぱちぱちと薪が燃える音を聞きながらミカの家がある方向を見つめる。流石に深夜に明かりは灯していないみたいなので全く見えず、闇に紛れている。
(明日、遂に桐島さんの家に着く。もうすぐ約束が果たせる・・・)
あの日、ゾンビから逃げることしか出来なかった俺達が逃げ込んだ部屋で交わした約束。桐島さんを家に送るという約束。これを目的にいままで進んできた。
家についたら桐島さんはどうするのだろうか。俺達はどうすればいいのだろうか。
そんなことを考えながらぼーっとしていると静かな足音が近づいてくる。
「ん?くーね?もう起きたのか?交代までまだ時間あるけど」
「ふわぁ~、なんか目が覚めちゃって。」
いつもはツインテールに結っている髪を下ろしているくーねは口をむにゅむにゅさせた後に大きなあくびをする。
それを見て釣られてあくびが出た。
ごしごしと目を擦りながら焚火に近づいてくるとポケットからごそごそと何かを取り出し無造作に火に放り込んだ。
「ちょっ!?今何投げた?!」
「ぽっぷこーん」
「へっ?」
急な出来事に脳の理解が追いつかないでいるとポンッ!ポンッ!と焚火が鳴り始める。
はじけた後焚火から飛び出したポップコーンは地面に落ちるわけでもなく、ふわふわと空中を漂いながら少しずつくーねの手にある箱へと集まっていく。
集まったポップコーンをさも当然のように食べ始めるくーね。
「そうだった。一緒にいると忘れかけるけどお前ファンタジーの住人だったな。」
もぐもぐとポップコーンを頬張りながら「ん~?」と気の抜けた返事を返してくる。
「起きちゃったし交代でいいよ~。エイタも眠いでしょ?」
むしゃむしゃごっくんとポップコーンを食べながらそんなことを言うくーねを見ていると気が抜けてくる。
「おう。ならお言葉に甘えさせてもらうわ」
「おやすみ~」
もうくーねの事は考えるだけ無駄だと思ったエイタは山登りで疲れていることもあり交代で眠りに就くのだった。
ちなみに少し頂いたポップコーンは出来立てアツアツで、何故か塩気が効いていておいしかった。
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