27 出発だ!
心格の力が失われ檻が消えた。
周りに集められていたゾンビ達が一斉に侵入してくる。
でもだいじょーぶ!私がいるからね☆
天井に穴をあけ空高くへと飛び出した私は基地を見下ろす。
基地を囲むように全方位からゾンビが押し寄せてくるのが分かる。
「今日はめでたい門出の日、こんな日は盛大にドーーーンと行きたいよねっ!」
くーねは腕を上げ手のひらを上に向けると光の玉を一つ、打ち出した。
ぴゅ~~~~~~~~ひょろひょろ~~と昇っていく光の玉。
一瞬消えたかと思うと、ドッーーーーンと盛大に爆発した。
「ひゃっほーーーう!!」
それは花火のように。一つの玉から拡散した数多の光が放射線を描きながら地面へと降り注ぐ。
チュドドドドドドドッ
光が着弾した遠くから次々と衝撃音が聞こえてくる。
反応からしてゾンビも大半を倒せただろう。
「ふ~、まっ、こんな感じかな?」
一仕事終えて元居た場所に降り立つとわっっと歓声が沸いた。
「あんた最高だよ!」
「ありがとう!ありがとうくーねたん!」
「すげえ!神の奇跡だ!」
「天使ぃ・・・」
凄い熱気、絶望の反動かな?
「どーもどーも。え?握手?じゃあ並んで並んで!」
いつのまにか長打の列になっていた握手待ちを捌きつつステージを設営させてライブの準備を進めていたら夜が明けた。
場はぐちゃぐちゃだった。
気合を入れて設営を進める人。疲れてそこらへんで寝てる人。久々の再開を喜び合っている人。ただぼーっと空を眺めている人。
でもそのどれもに絶望はなかった。
「くーねたん!ステージができましたぜ!」
「おっ!じゃあ歌っちゃおうかな!」
そんなこんなで始まったライブは二時間も続いた。
「ふわ~~すげえ寝ちまった。」
「おはよ!エイタ君!よく寝れた?」
ライブが終わった後、指導者が居なくなったことでこれからどうすればいいのか混乱している人を遠巻きに見ながら朝ご飯を食べていた。
ライブの途中で起きたミカと一緒にご飯を食べているとようやくエイタが起きる。
「左眼のせいで最近全く寝れてなかったからな。久々にすげえ寝た気がする。それで、結局あのあとどうなったんだ?」
「檻がなくなった後はくーねたんちゃんがゾンビを倒してくれたよ。しかもそのあとライブしてたんだ!凄かったよ~。ほんとかわいい!エイタ君も見れればよかったのにね。もったいない!」
「そ、そうか・・・ライブしてたのか・・・」
エイタが若干落ち込んでる。私のライブ見たかったのか。もう~言ってくれればいつでも歌うのに!
「まあそれはいいや、で、ここはどうなったんだ?あいつ、遼太郎は?」
え?!いいの?!ガーーン
「あの人ならもういないよ。くーねたんちゃんが倒してくれたみたい。」
「っ・・・そうだよな。よかった。そうか、もういないか。」
あれ?なんかさっきより落ち込んでない?あれかな、自分で倒したかった感じかな?なら今度から因縁ありそうな感じの奴は手出さないようにしようかな?
「それにしても騒がしいな。」
「ここを支配していた人が居なくなったんだもん。みんなこれからどうすればいいのかわからないんじゃないかな?」
「それもそうだよな。急に自由になったって言っても、安全になったわけじゃないし、なんならこれからどう身を守りながら生きていくかのほうが大変だろうな。俺たちもこれからどうすっか」
「そうだよねぇ、あっ!私達の荷物!ちょっと取ってくるね。」
エイタとミカがなんか難しい話してる。ついていけないからぼーっとしてると誰かがこちらに近づいてきた。
片目の人だ。その人はエイタに話しかけている。
「エイタ。それにみなさんも。ありがとう。この基地を救ってくれて。」
「あんたは、あの時の。別に礼を貰う様な事は何もしてないよ。俺らはやりたいことをやっただけだ。」
「だとしてもだ。」
どうやらエイタとこの青年は知り合いっぽい。
その青年が持っていた箱をエイタに差し出す。
「これを、あんたらすぐここを発つんだろ?」
「これは、、、ありがとう!助かるよ。
ああ、俺たちは直ぐ発つよ。どうせいても邪魔だろ?」
「そんなこと誰も思うわけねえだろ。みんなあんたらに助けられたことに感謝してるよ。だが、そうだな。そこの子が歌う度に作業の手が止まるから邪魔かと言われれば邪魔だな。」
私を見るとそういって笑う青年。いま私の事邪魔者扱いした?許せません。
「あははは、そりゃ違いない。じゃあさっさと出てくことにするよ。でも大丈夫か?いろいろ大変だろ?」
「まあな、あの嬢ちゃんからもいろいろ聞いたよ。いままで東間達に支配されていた俺らには力がない。詳しい情勢もわかんねえ。でも何とかするさ。せっかく救われた命だからな。大事にしねえと。じゃあな、お前たちも達者で生きろよ。」
そういうと片目の青年は歩いて行ってしまった。
多分あの人が今後ここの基地を引っ張っていくんだろうな。
こういう展開はだいたいそうなってきたし。
「エイタ、何をもらったの?」
「ん?これか、ラジオだよ。ラジオ。わざわざ持ってきてくれたらしい。」
「おお!ラジオ!やったー!目的達成だね!貸して!」
手を差しだけどエイタはラジオを渡してくれない。
「くーね。お前この前ラジオ壊したことをもう忘れたのか?一個しかないんだ。暫くはラジオ禁止!」
「んなーーーー!!」
ひどい!そんなー!確かに壊したけど!壊したけど!!
ぶーぶーいっているとミカが荷物をもって戻ってきた。
エイタも荷造りを始める。もう出発するみたい。っとそんな時、一人の少女が寄ってくる。
「ミカ。もう、いっちゃうの?」
「あみちゃん・・・うん。もう少ししたらここを出るよ。」
あみちゃんと呼ばれた少女、ミカが助けたって言っていた人かな?は悲しそうに俯いた。
「私はまだあなたになにも返せていないのに・・・」
「ううん。エイタ君を呼んできてくれたでしょ?それだけで十分だよ。」
「そんなっ、それじゃあ私の気が収まらない」
「う~ん。そう言われてもなぁ。っあ!じゃあさ、次来るまでに用意しておいてよ!」
「用意?」
「うん!私達はこれから出発しちゃうけどさ、別に今生の別れってわけじゃないんだし?次またここに来た時になんかしてくれたらそれでいいよ!」
「うぅ。ずるいよミカ・・・」
あみちゃんは泣き出してしまった。ミカが優しく抱いている。
うんうん、友情ってやつだね!ね!エイタ!っていないし。
どこいったんだろ?
と思っていたらエイタが帰ってきた。その隣にはポニーもいる。いままでどこいってたんだか。
さらにその後ろには大勢の人がぞろぞろと付いてきている。
「よし、じゃあいくか!」
「わっふ!」
説明なし?!なんか後ろの人たち凄い顔してるけど。
「絶対、絶対また会おうね!たとえどっかで死んでゾンビになっても!」
「うん!絶対!」
ミカ達の方もまとまったみたいだね。でもゾンビにはなっちゃダメでしょ。言わないけど。私は空気も読めるのです。
というより私には直接話しかけてくる人はいないの?いや別にいいんだけど、全然寂しくなんてないし!
エイタがもともと入口だった所へ向かって歩き出す。
私達も付いていく。その後ろをぞろぞろとさらに付いてくる。
なになに?!凄い見てくるんだけど?!てかどこまでくるの?!
もともと檻で仕切られていた場所は今でもその外側と内側の違いが分かるくらい見た目に違いがあった。
そこを通り過ぎると後ろの集団が立ち止まる。
流石にずっと付いてくるわけじゃないんだね。
「うわあああああああ!くーねたん!くーーーーねたん!!!」
「うぇ?!なんだ!?」
「いかないでくれえええ!!」
「俺の天使さまああああああ」
「おっおう。たった一日でかなり熱狂的なファンをつくっちゃった」
どうしようかとエイタとミカを見るも二人とも気にした様子もなく歩いていく。
「えー!まさかの無視?!」
あんなに熱を持って呼んでくれたなら流石になんかファンサしたいな。
私は振り返ると光球を生成する。
「みんな~~ありがと~~~!!!!」
光の玉を出すとそれに軽くキッスして上空にぶん投げる。
集団の上まで行った光はそこで破裂し、ケミカルなキラキラを振りまいた。
\\うおおおおおおおおおおお!!!//
「ばいばいーーーい!またね~~~」
ブンブンと手を振り歩き出す。
後ろでは依然として熱狂が巻き起こっていたが、どこか背中を押されるような気分だった。




