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25 生き残りの基地 7

僕はただのサラリーマンだった。


 嘘だ。本当はうだつの上がらないカスみたいな営業マンだ。


 毎日のように電車に乗っては仕事に赴く。

上からは怒られ下からは馬鹿にされる。僕が何したんだっての。そんなつまらない毎日。


 生まれてこの方彼女なんてできたこともないし、友人だっていない。


 そんな死んでるのと変わらないような人生。


 でもそんな人生にも楽しみはあった。

それは出勤するために電車に乗る時。


(あの子かわいいな~。おっ、あっちもいいじゃん。)


 ただ女の子を見漁るだけ。でもその為だけに生きていると言っても過言じゃない。


 そんな生活を何年も続けていた時、運命の出会いをしたんだ!


(あれは新入生か。もうそんな時期なんだな~)


 この時期は楽しい。今まで見なかった子たちが一気にやってくる。


 そんな子たちを遠巻きに眺めていると、一人の少女が僕の前を通った。

その時にパスカードを落としてしまったのだ。


「あっ、あの、落としましたよ。」


「えっ?私ですか?あ!ほんとだ!拾ってくれてありがとうございます!お礼にこちら上げます!」


 少女はニコッと笑いパスカードを受け取るとポケットから小さいお菓子を取り出し渡してきた。


「ありがとうございました~」


 そしてすぐに行ってしまう。


 僕はその場で震えた。なんていい子なんだ。


 僕を見るとみんな嫌な顔するのにあの子はしなかった。

 なんてかわいい子なんだ。

 声もすごくよかった。見た目は地味目だったけど磨けば凄いことになりそうだ。


 それにお菓子だってくれた!僕に気があるに違いない!!


 絶対にそうだ!あの子は僕の事が好きなんだ!


 確か名前は、桐島ミカ。



 それからは毎日が楽しかった。僕は常に彼女を見ていた。

学校も家も全部調べた。幸せだ。


 でも不安な事もあった。なんでもミカちゃんに好きな人がいるみたい。

社会の厳しさも知らないようなガキ。エイタとか言ったか?僕は許さない。

 ミカちゃんの心を惑わす害虫だ。


 そんなことを一年続けていた時だった。あの日がやってくる。

僕の人生を大きく変えるあの日が。


 大崩壊。世界が終わった。もちろん僕を馬鹿にした会社も人間もみんないなくなった!最高だ!とてもすっきりしたよ。


 崩壊から少したって落ち着いたころ、僕はミカちゃんの家がある場所に行ったんだ。危険だからね。保護してあげないといけないと思ったんだ。


 でもミカちゃんまだ帰っていなかった。ご両親泣いていたよ?まったく家出かい?心配だなぁ。


 僕はミカちゃんと暮らすために拠点を作った。ホームセンターを改造して少しずつ拡大していく。


 ある日、鍵を見つけた。不思議な鍵だ。力が流れているのを感じる。

これがラジオで言っていた神器というやつなのか?


 これは凄い!鉄格子を自在に操れる!これがあれば、、、


 あはははははは、最高だ。最高だよこれは。

力を使い僕は遂に女を手に入れた!できればミカちゃんと初めてがよかったけど。まあいいだろう。これはハマりそうだ。


 日に日に檻が増えていく。それに比例して女も。


  流れ人は男女に分ける。

男は労働力に。

女は僕の好みの女。それ以外は好きにしろ。


 ああ、神様。本当にありがとう。僕は今人生で一番幸せだ。

あとはここにミカちゃんさえいれば・・・



~~~~~~~~~~~~~~


「もうお前は終わりだよ。東間。」


 俯いたまま動かなくなった東間。一見すると死んでいるとも見えるかもしれない。


 正直俺はどうすればいいかわからないでいた。

ここに居た人たちの話や、道中の惨状をみればこいつが何をやってきたのかは大体の予想がつく。それは到底許されるものではないだろう。


 これ以上被害が出ないように殺すか?


 そう考えた瞬間体が強張る。


 ここに来るまで何体もののゾンビを倒してきたことか。

彼らは元は人間だったはずなんだ。俺はそれを殺してきた。

だから今からやることもそれと何も変わらない。


 そのはずなのに。


 怖い。人を殺すのが怖い。

でもやらなきゃいけない。ここでやらなきゃこいつはまた繰り返すかもしれないから。


「エイタ君だけには背負わせないよ」


 俺が東間を殺す事に躊躇っていたら、後ろから声を掛けられる。

振り返るとそこにはハンドスコップを握りしめたミカが立っていた。


「これ、ありがとね。凄く熱いけど。おかげてちょっと回復したよ。」


「そうか。上手くいってよかった。」


 元々は心格に核力を溜めて、ミカがそれを受け取り核力を回復させ、能力で東間を攻撃。その間に脱出。って感じで考えてたんだけど先に東間が拾い投げてしまった事でいろいろ狂ってしまった。


 まあ東間が触ったことで右手もほぼほぼ無力化できたから結果的には問題はなかったのだが。


「桐島さん。動いて大丈夫?」


「うん。ちょっとくらくらするけど・・・大丈夫。

それにエイタ君だけに背負わせたくなかったから。」


「さっきも言ってたけどそれって・・・」


 ミカは俺の隣に並ぶとハンドスコップを東間に向ける。


 俯いたまま動かなかった東間も何かを感じ取ったのか「ヒッ」と体を跳ねさせた。


 察しはついていたが、やはりそう言う事か。

今ミカから放たれているのはまごうことなき殺気だ。


「ねえエイタ君。あの日の事、覚えてる?」


「え、あの日?」


 人を殺すかどうかといった緊迫した状況にも関わらず、ミカの口から出た言葉は恐怖でも怒りでもなかった。


「中学生のころ、変な輩に絡まれてる女の子を助けたことってない?」


 急に何の話だろう?そんなかっこいいことしたことなんて・・・あっ。


 思わずミカを見る。そういえば友達が輩に絡まれてやられたとき、やり返すために輩の縄張りに乗り込んだらこんな感じの子がいたような・・・


「ふふっ、思い出してくれた?私ね、ずっと、お礼を言いたかったの。あの時助けてくれてありがとう。って。まあエイタ君はそんなつもりなかっただろうけど」


 そうだ。思い出した。あの時乱闘していたら通報を受けた警察が来て病院送りにされたんだっけ。

そしてその通報した人が輩に絡まれていた少女だったはずだ。

少女を助けるために戦ったってことになって俺のお咎めもなしだったんだよな。


 あれがミカだったのか。


 ミカは俺に体ごと向かうと優しくはにかみ言った。


「あの時は助けてくれてありがとう。」


「ちょっ」


 礼を言うとミカはそっと抱き着いてきた。

服を破かれ晒されていた生身の体が鼓動を直で知らせてくる。


 ぎゅーっと力強く抱きしめられ、どうしたらいいか分からず両手を上げているとミカが僅かに震えている事に気づく。


(桐島さんも怖いんだ。そりゃそうだよな。)


 俺はミカの肩を掴みゆっくりと引き剝がすと、上着を脱ぎミカに羽織らせて上げる。


「なあ桐島さん。俺と、共犯者になってくれないか?」


 ミカは目を丸くした後、大事そうに上着を掴み表情を和らげると東間に向き直した。


「私からもお願い。一人じゃちょっと、無理そうだから。」


 俺も東間に向く。

東間は未だに俯いたままでいるものの、体は震えていた。


「じゃあ、やるか。」


「うん。そうだね。」


 一歩、東間に近づく。


「ま、っまままっま、待ってくれ!謝る!なんでもするから!命だけはやめてくれ!」


「ん?じゃあ死んで?」


「ひっ、お、おい男!よく聞け、僕を殺したら大変なことになるぞ!ここを囲う鉄格子も全部なくなる!そうなったらどうなるかわかるだろ?ゾンビだらけになるぞ。」


「あ?どうでもいいんだよそんなこと。ここがどうなろうと俺たちの知ったことじゃねえ。それになんかあってもくーねがどうにかしてくれるさ。」


「なっ、そ、そうだ!くーね!あの女がどうなってもいいのか?俺を殺せばあの女は・・・」


「はぁ、聞くに堪えないね。ねえエイタ君、私は頭を狙うからエイタ君は心臓をお願い。」


 ため息を吐いたミカはハンドスコップを構えると詠唱を綴りだす。


 頭と心臓、この二つを破壊すればゾンビにはならない。

東間は未だに何かを喚いていたがもう耳には入ってこなかった。


 バールを構え、ミカの詠唱を待つ。


 やがて詠唱が終わり、技を打ち出したのと同時に俺はバールを突き出した。

いろいろ考え中

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