22 生き残りの基地 4
少し前に21話を投稿しています。まだ観ていない人は是非
本を読むのが好きで、中でもライトノベルは私に沢山の刺激をくれた。
現実とは違うファンタジー世界で異世界へ転生する主人公や、超能力で世界を救ったり、チートもらったのにスローライフ始めたり。
中でも私は魔法使い系の物語が好きで読んでいた。
火の玉を生み出し、風を巻き起こしては空を飛び、雷を落とす。果ては重力なんかにも干渉しちゃって。なんていっぱい妄想してた私は立派な中二病だったと思う。
そんな時ネットで気になっていた新刊が発売されることを知った私は、特典付き欲しさに入荷当日に近所の本屋に行くも目当てのものは入荷されてはいなかった。
それでも、どうしても欲しかったから少し遠くにある大きい本屋に行くことにしたんだ。
家から電車を乗り継ぎ二時間。
少し遠くの街まで来た。
駅前の本屋で欲しかったものを買えた私は気分が高まり、普段来ない街だったこともあり、散策することにしたんだ。
ちょっと人気の少ない路地に行ってみたり、入りの少なそうな喫茶店で優雅にお茶飲んでみたり。謎の公園でブランコ漕いだり。そんなちょっとした非日常を楽しんでた。
気分は物語の主人子。私は今冒険をしている!そんな時だった、
「おいねーちゃんちょっと待ってや。」
「えっ、」
調子に乗ってちょっと街から離れたところに行き過ぎた私に、高校生くらいの三人組が話しかけてきた。
危険だと思ってすぐにその場を離れようとした。
でもそれは許されなかった。
「おっとっと、へへっ、通さねえよ?」
「お嬢ちゃん俺たちと遊ぼうぜ~?」
「兄貴ぃ、こいつ芋じゃねえすか?」
「バカよく見て見ろよ、これ結構な上玉だぜ?」
「ん?ほんとだぁ!こりゃ磨けば極上じゃないっすか?」
私を逃がさないように囲み盛り上がる三人。
「こんなとこ一人で歩いてんだ。お前も内心期待してたんだろ?」
一番背の高い人が私の腕をつかみ、壁に追いやる。
「やめっ、離してください!」
「おいおいいい声してんじゃん!兄貴!たまには俺に先やらせてくださいよ!いっつも兄貴が壊した後なんで碌に鳴いてくれないんすよ?」
「お前ほんと好きだなー、いいぜ、たまには譲ってやるか。」
「ヒャッホウ!大好きですぜ兄貴ぃ!」
どんどん進んでいく話を聞き私は恐怖でいっぱいだった。
助けを呼ばなきゃ、誰でもいい。助けを・・・
「誰かっ!誰か助けてっ!」
できる限り声を張り上げて叫ぶ。
「おっと、暴れんじゃねえ。それといくら叫んでも無駄だぜ?この辺りは俺らの島なんだ。誰もいねえからよ。」
「そんな・・・」
自分を呪った。こんなことなら大人しく家に帰っていればよかった。
俯き、涙があふれてくる。
日常のすぐそばにこんな危険があるなんて思っても見なかった。
その時少し遠くの路地が騒がしのに気づいた。
バッと顔を上げその方向を見る。
すると二人の人が走りながら曲がってきた。
一瞬助かったと思った。だけどすぐ絶望に変わる。
目の前の三人と同じ服を着ていたから。目の前の奴も二人を見てニヤニヤしている。
今度こそ俯く。
あー、終わった。私はここで・・・
「カス共まてやごらあぁぁああ!!」
「「「「!?」」」」
予期せぬ怒号に私と目の前にいる三人が驚く。
恐る恐るそちらに目線を向けると、そこには五人とは明らかに様相が違う人が一人だけこちらに向かって走ってきていた。
歳は私と同じくらいだろうか?とてもじゃないが高校生には見えない。
それに凄くボロボロ。これから喧嘩する。というよりいままで喧嘩してましたってくらい体中傷だらけだった。
「あっ、兄貴ぃ!お助けを~~」
「あいつ、まじやべえっすよ~」
「なにやってんだお前ら?そんなんさっさと片付けちまえよ」
あの人から逃げてきたであろう二人が仲間を通り過ぎていきそのまま奥へと走って逃げていく。
「あっ!おい!お前ら!なに逃げてグハッ」
通り過ぎていった仲間を見ていた兄貴と呼ばれる人に追いかけてきた人が飛び蹴りした。
私はこの時人生で初めてリアルの飛び蹴りを見た。
「てめぇが親玉か?!よくも俺のダチに手出してくれたなぁ!クソがっ!」
蹴り飛ばされたことで私も開放される。
残りの二人もあの人を囲むように動いてる。
「てめぇ、よくもやってくれたなぁ?オイッ!どこのもんじゃコラァ!」
「てめぇ兄貴になにしやがる!?」
「俺らに手出して無事に帰れると思うんじゃねえぞ!」
みんながあの少年を注視している。
この時私は蚊帳の外だった。
今だったら、逃げれる。でもあの人は・・・
「うるせぇクソども!くたばりやがれや!」
三体一であり、体格差だってあるはずなのに果敢にも殴りかかる少年。
逡巡の後、私は走り出していた。
わが身可愛さにあの人を見捨てたんだ。走り出すときに一瞬だけ少年と目が合って、その顔がずっと頭にこびりついている。
気づいた時には既に駅まで戻っていた。
文字通りの全力疾走。途中、私が逃げたことに気づき追いかけてきた気がしたけどいつの間にかいなくなっていた。
私は直ぐに警察に駆け込み息も絶え絶えながら事情を説明した後すぐに普段の運動不足からか気絶してしまった。
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あの後どうなったか詳しくは知らない。
ただ、あの五人は警察に捕まり、少年は重症のため病院に送られていたことを知ったのは、結構後になっての事だった。
それから私は逃げる様に遠くの高校に進学したし、見た目も地味に見えるよう努力した。
だから高校に入学した時には本当にびっくりした。
あの時助けてくれた人。エイタ君がいたことに。
ずっと、お礼が言いたかった。
でもなかなか話しかける勇気がでなかった。
私がいつも見つめているから周りからはよくからかわれたっけな。
多分エイタ君は私を助けてくれたことなんて覚えてないんだろうけど。
というよりあの時は偶然私がいただけだからエイタ君からしたら助けたとすら思ってないかもしれない。
あの時も驚いたなぁ、地震があった日。
棚の下敷きにされた私に助けに来てくれたのがあなただったから。
いつも助けてくれるんだ。ピンチの時に駆けつけてくれるんだ。
絶対に・・・
「エイタ、君に・・・」
「なんだ!あの男の名を口にするなっ!なんなんだお前はぁ!!」
ぐしゃぐしゃと片手で頭を掻きむしった東間は一本のナイフを取り出す。
「もう許せないっ!生きてるからいけないんだ。殺して本当に僕だけのものに・・・」
震える手でナイフを突き出そうと、
「生きてっ、ありがとうって言うんだっ!!!」
体中の核力をかき集め、感情のまま叫ぶ。
「『吹っ飛べっ!』」
ゴオゥ と私を中心に突風が巻き起こった。
そのお陰で東間が少しだけ後方へ押される。
ほんの一瞬の時間稼ぎ。それだけで十分。
掠れる視界に人影が映り込む。
ここ最近になってよく見る様になった姿。
どこか頼りなくて、でも誰よりも信頼できる背中。
目の前に現れた人の手に炎が集まっていく。
暗い地下牢に差し込む燃え盛る光。
「てめぇ!どうしてここにっ?!」
少年は東間が何かを言う前にその拳を振り下ろし叫ぶ。
「『エクスプローーードッ!!!!』」
視界が真っ白に染まった。
数瞬後に衝撃と轟音。そして熱風が吹き荒れる。
収まるのを待ってからゆっくりと目を開くと。
「やっぱり来てくれたんだね。エイタ君。」
ボロボロの姿になりながらも彼はそこにいた。




