19 生き残りの基地
「ハッ!」
ズドンと思い一撃がゾンビを吹き飛ばす。
殴った際に延焼した”白い炎”が少しずつゾンビの体を燃やしていく。
「う”う”う”あ”ぁあ”あ”あ”!」
燃やされたことによりその場で藻掻く事しか出来なくなった標的の頭部をバールで殴りつけ、転ばした。
立ち上がろうとするゾンビを抑えつけて、手から炎を出し続けて燃やす。
すると次第に動きが鈍くなり、ゾンビはそのまま動かなくなった。
魂が解き放たれ肉体だけとなった死体は地面に伏した後その身を焦がす炎を徐々に減らしていき、そこには灰だけが残る。
「ふぅ、なんとかなったな」
灰になるまで燃えるのを見届けた俺は戦闘モードを解除し、楽な姿勢になる。
ちなみに戦闘モードとは眼から炎が出ている状態の事だ。
戦おうと思ったときには何故か出てくるようになってしまった。
しかもめっちゃ熱い。最近では少し慣れてきたけど・・・
炎が収まった左眼を手で押さえ具合を確認しながら、ゾンビとも一対一ならかなり戦えるようになってきたことに喜びを感じているとどこかの上の方からくーねの声が聞こえてきた。
「エイタ~、今のは良かったよ~。核力の放出もちょっとは制御できるようになってきたね!」
ズササーと瓦礫を滑りながら俺の方に降りてくるくーね。
その背中にはミカが乗っている。
「エイタ君が片目を抑えて笑ってた・・・
やっぱりそういうお年頃なのかな・・・」
「おいちょっと待て!人を中二病呼ばわりするのはやめてもらおうか!」
「きゃー私もエイタ君の炎で燃やされちゃう!」
パーーと逃げていくミカ.
ミカは最近言動がおかしくなってきてる。というより遠慮が無くなってきている。と言った方がいいか。とりあえず後で〆てやろう。
「一対一は、だいぶ安定してきたね。この感じなら敵増やしても大丈夫そう?」
「っう、まあ二、三体ならなんとかなりそうだけど。」
「おっけー!じゃあ連れてくるね!
ミカー!いくよーー」
「っあ、ちょっと休憩を・・・ってもういっちまった。」
そう、今やっているのは戦闘訓練だ。
くーねがどこかからゾンビを連れてくる。
連れてこられたゾンビと戦う。
やっていることはこれだけだが、百聞は一見に如かずともいうし、これがくーねなりの戦いの教え方なんだろう。ちゃんと戦ってる時に上からアドバイス出してくれるし。
現在の日付は”五月六日”
あの日、手紙を読んでから既に一週間ほどの時間が経過していた。
俺たちは当初の予定通りミカの家に向かいながら道中でゾンビを見つけては今みたいに戦うということを繰り返している。
進むペースは少し遅いがそれでもしっかり成長していることを実感していた。
特に一番効果を実感しているのは夜な夜な行われるくーねとの組手だろう。
本人的にはまだまだ手を抜いているらしいがそれでもまったく見えない。動きを捉えられないんだ。
基本気が付いた時には腹に拳がめり込んでる。全く持って容赦がない。
あの速さで力を使ってない素のスペックなんだから凄まじい。
うぅ、思い出したら腹痛くなってきた・・・
お腹を擦っているとくーねが戻ってくる。その後ろには三体のゾンビがいた。
「エイタ~戻ったぞ~」
ミカを担いだままジャンプすると高く安全な場所に移動するくーね。
そのままビシッっと俺を指さして宣言する。
「さぁ行くんだゾンビ達よ!あの炎の少年を殲滅しろ!」
「う”う”う”あ”ぁ!!」
ノリノリでそんなことを言いながらゾンビに指示を出すくーね。
もちろんゾンビが言う事を聴く訳ないのだが、目の前で襲える対象が俺しかいなくなってしまったことで、必然的にこっちに向かってくる。
「こいやおらぁあっ!!」
手に炎を出し丸いボールのような形をイメージをする。
丸くなったその炎を投げるっ!
投げるッ! 投げるッッ!!
「「「お”お”う??」」」
しかしゾンビに変化はない。それはなぜか・・・
「うーん、やっぱり飛ばないねぇ。普通外に出した核力は簡単に切り離せられるはずなんだけどな~」
はい、そもそも飛んでません。
俺が手に出した炎の玉は未だにそこにある。
もともと核力は体の外に出すのがすごく難しいらしい。
まあ俺の場合出しているってより溢れ漏れているんだが。
なので既に出せている俺ならそれを投げて飛ばすくらい簡単にできるはずなのだが。体に引っ付いて離れてくれないのだ。
なので結局接近戦の肉弾戦になる。
「おりゃあああっ!」
先手必勝一番手前にいたゾンビを勢い付けて殴り飛ばし、続けざまにバールを振るいもう一体のゾンビに叩きつけた。
よろめいたところを腹に蹴りを入れ転ばせる。
これで少しの間一対一の状況に持っていけた。
余裕を持った状況ならゾンビの攻撃なんて簡単に避けられる。
掴みかかろうとしてきた無傷のゾンビを難なく避け、その頭部にバールを叩き込む。
何度も戦ったことで上がった基礎能力のおかげか一撃で破壊することができた。
頭部を失ったことでバランスを崩し、大幅に鈍くなったところにバールで心臓を貫く。
これで一体は倒した。残り二体も起き上がるが、既にダメージによって動きが遅くなっている。
俺の攻撃はとても単純だ。
バールで殴るか突くか、それか炎を纏わせた拳で殴るか。蹴るか。
ちなみにこの炎も焼ける様に熱い。
一体のゾンビが腕を前に上げ襲ってくる。それを避けてカウンターを仕掛けようとしたが、ちょうど良くもう一体のゾンビが突進してきた。
「ぐっ・・・ラァ!」
ゾンビに掴まれてしまうが、掴まれた部分から炎を出すことでゾンビを焼く。
ジュウジュウと煙を出しているゾンビの腹に蹴りを食らわせ引きはがし、その後逆に距離を詰め顔面に炎を纏った拳を叩き込んだ。
頭が潰れたことを確認するとすぐに体を反転させ残りのゾンビを捉える。
既にこちらに向かってきていたゾンビの攻撃を避け今度こそカウンターを叩き込むことで無力化。
二体のゾンビの心臓を突き刺すことで止めを刺し戦闘を終了する。
「はぁはぁ、ははっ、なんとか倒せたな。」
「エイタ君、ゾンビ倒しながら笑ってるんだけど・・・もう暗黒面に堕ちちゃったのかな?ちょっと早くない?」
人が勝利の余韻に浸っているときにミカが変なことを言ってくる。
別にそんなことはない。ただ三体一でも戦い勝ったことが嬉しかっただけだ。
「ちょっと早くない?ってなんだよ!まるで堕ちるのは確定事項みたいじゃねえか!」
「え、エイタ君自覚なかったの?!最近ずっと『力が欲しい』とか『この力があれば・・・』って呟いてるよ。
正直ちょっと心配です。」
「えっ・・・」
まじで?俺そんなこと言ってた?全然自覚ない・・・
くーね、ミカのいつもの冗談だよな?どうして目を反らすんだ!ねぇ!
「そ、それより今日はこの辺にしておこうか!そろそろ日も暮れそうだし!」
パンッ と手を叩きながらくーねが提案する。
もうそんな時間か。腕時計を見ると時刻は十七時を超えたところだった。
「そうだな、核力使いすぎて俺も疲れたし、今日はこのくらいに・・・」
今日はこのくらいにしよう。と言いかけた時、周りがやたらと騒がしいことに気づく。
「おい、この雰囲気って・・・」
「えー、またなの?ねえまたなの?」
俺たちを囲むように全方位、いたるところからゾンビが登場してくる。
「う”う”う”あ”ぁ」
「あ”あ”あ”ぁ”ぉ」
「ぐぎゃごごごこっこ」
「お”お”あ”あ”う”ぅ”」
ん?今なんか変なの混ざってなかったか?
「ありゃりゃ~、いつの間にかいっぱいついてきちゃってたか~」
てへへ~と頭を掻きながらそんなことを言うとジャンプして高台から俺の目の前へと降り立った。
「ミカはそこで援護ね!」
「まかせて~」
そういうとポケットから”扇子”を取り出し広げる。
あれは安田さんが託していた心核。その能力は少しあったかい風や冷たい風を起こせるだけだと思われていたが、実際はもっと強力なものだった。
「じゃあ早速だけどいっくよ~!『吹き荒れろっ!氷臨の風!』」
叫びながら扇子を振るう。その瞬間。ゴオゥと大きい風が吹く。
「うっ、さっみぃ~~~」
それはまるで真冬の吹雪の如く、極寒の風がミカを中心に展開されていく。
「うぅ~くらっときた~あとは任せたよ~」
その一回でごっそりと核力を持っていかれたミカが座り込む。
全身に炎を巡らせることでなんとか動けるくらいまで体が温まる。
くーねはもともと関係無さそうに既に動き始めゾンビを殴り飛ばしていた。
俺もくーねに続きゾンビに向かう。
「あ”っ あ”あ”」
氷点下マイナスの極寒の風をなんの防寒もなしに受けたことによってゾンビ達が固まったように動かない。
既に固まりかけているゾンビを殴りつけるとボロボロと砕けていく。
砕かれた氷のように。
この風は長いこと持たないがそれでも一分足らずでほとんどのゾンビを倒すことができた。主にくーねが。
くーねの一撃は威力が強い故に多くのゾンビをいっぺんに倒してしまうからな。
「ぐぎゃご?!ぎゃぎゃごごこっここ!」
「わー!なにあれ!ゾンビじゃない!」
そこのいたのは・・・えーっとなんだあれ、カエルか?
「ごごーーー!!」
カエルっぽい奴が口を開くとそこから長いベロが槍のように突き出される。
「あぶないっ!」
くーねに向かって突き出されたベロ。このままだとくーねに突き刺さってしまう。
手を伸ばしくーねを掴もうとするが間に合わない。
「ん?どうしたの?」
俺の急な行動に不思議がったくーねがこちらを向く。
バカ野郎!今はこっちよりも・・・
ベロが刺さってしまう。そう思ったときくーねはほんの少しだけ体を傾けた。
急に何も無くなった空間にベロが通過すると、それをなんの躊躇いもなく掴み取る。
「?!」
{ごぎゃ?!?!」
うそん、それ掴めちゃうの??
俺も、ベロを掴まれてしまったカエルも驚きを露わにする。
そのままベロを引っ張ると釣られてカエルが飛んでくる。
困惑の表情を浮かべているカエルにくーねは光を纏わせた拳を叩き込んだ。
一瞬光が爆ぜカエルっぽいやつが爆散する。
その後、ゴトンと魔石が地面に落ちた。
「えぇ・・・つっよ・・・」
パンパンと手を叩きながら一仕事終えたくーねがふぅと息を吐く。
「何言ってるの?エイタもこのくらい出来る様になんないと魔王はおろか幹部どもにも勝てないぞ~」
ニヤニヤしながらそんなことを言ってくる。
くっそ~、力が欲しい・・・もっと強い力が・・・ってホントに言ってるわ!やべ。
手軽く残りの残党も片付けてしまったくーねは上に戻りミカを背負う。
「ミカ大丈夫?」
「うっぷ、うん大丈夫、歩けるよ。」
担いだまま下に降りてきたくーねはそっとミカを下ろしてあげる。
くーねの肩に捕まりながらはぁはぁと呼吸をしている。
「桐島さん大丈夫か?結構核力使ったみたいだけど。」
ミカは震える手を上げ顔を青くしながらぐーと親指を立て、
「へへっ、ちょっと調子に乗りすぎた・・・」
「まあなんかノリノリで技名叫んでたしな・・・何あれ初めて聞いたぞ?」
恥ずかしそうに目を反らす。その先にはくーねがいた。
「だって~、くーねたんちゃんがよく技名叫んでるじゃん!あれかっこいいんだもん!私もやりたかったんだもん!」
急に名前を出されたくーねはキョトンとしながら何を当然のことをと言った目で言う。
「んにょ?何言ってるの?なんか叫んだ方が威力が上がるのは常識だよ。技に感情が乗るからね!それにイメージ通りの技が再現しやすくなる!エイタも強くなりたいならなんか叫びな?」
「うぇっ、まじかよ・・・どうしようかな・・・」
「ほらーー!いいんじゃん!そういえば確かにいつもより威力高かったかも?核力の消費も凄かったし。」
「あれっ、でもくーねさっきあのカエルみたいな魔獣倒すときなんも言ってなかったよな?」
「ちっちっち~、簡単に倒せる相手に使ってももったいないだろ~
ああいうのはね、ここぞっ!って時に使うからいいんだよ~」
なるほど、つまりは必殺技ってやつか。
どうせならかっこいいの付けたいな。白い炎だし『ホワイトバーン』とか?いやダサいな・・・
「とか考えてそうだね!」
「わっ、べっ、別に考えてねえし!人の心を読むのはやめてもらおうか!」
ミカに内心を見透かされて若干恥ずかしくなりながらも辺りをキョロキョロする。
「それにしても突然来たよな。魔獣までいたし。あいつほど強くなくて助かったよ。」
「エイタ達は魔獣見るのはあれが初めてだったから感覚がおかしくなっちゃったけど魔獣なんて普通あんなもんだよ。
あの獣の魔獣が普通より強いだけだから。」
さっきのカエルみたいな魔獣にも勝てなそうだったんだけど・・・
俺そんなやばい奴に喧嘩売ってたの?こわい・・・
魔石を回収したくーねは手早く浄化しミカに渡す。
獣の魔獣より半分以上小さい魔石は、ミカが核力を吸収するとすぐ無くなってしまい砕けてしまった。
「ふい~生き返るよ~でもこれカエルの核力なんだよね・・・」
「大丈夫だよ桐島さん。成分は一緒だから」
「それエビの尻尾の話?だとしたら私まんまカエル食べたことになるんですけど!あっ、ちょっと!」
フッと笑ってやるとぎゃーぎゃー怒り出した。これでさっきの発言は許してやろう。
プンスカと怒るミカと言い合いをしながらも三人で拠点へと戻る。
拠点と言っても比較的被害が出ていない建物を借りて寝泊りしているだけだが。
「わっふ!」
「ただいまーポニーちゃん」
普段は放し飼いしているポニーも戦闘訓練の時ばかりは危険なのでお留守番させている。
だいたい拠点に戻るとミカが食事の用意を始め、くーねが周囲に危険がないか警戒をする。
俺?俺はほら、核力の練習とかいろいろだよ・・・
ポニーを撫でていると食事ができ、ご飯を食べる。基本は見つけた保存食や缶詰などを、ミカが良い感じに調理してくれる。。
それを食べながら今後のことについて話す。
「桐島さん、今ってどのくらい進んでるかわかる?」
「うーんとね、半分は過ぎてると思うんだけど、私も今のルートあまり通らないから詳しくは分かんないんだ。どうしたの?」
「いや、まだまだ掛かるようなら一度どこかで物資の調達をしたいなって」
「あーあれの?」
俺が欲しがっている物に心当たりがあったのかカバンの中からとあるものを取り出すミカ。
それは防災用のラジオだった。
初めて見つけたときはまだこの世界には生きている人がいると希望を与えてくれたアイテムなのだが、
「確かにこれは新しいの欲しいね・・・」
現在のそれは見るも無残な姿へと変貌していた。
手回しのハンドルは折れ、回すことができなくなり、ラジオを受信するためのアンテナも根元からぽっきりと無くなっている。
既にラジオを聴くという役目は果たせないくらいには壊れていた。
なぜラジオがこんな事になってしまったかというと・・・
「ぴゅ~ぴゅぴゅ~」
壊した元凶を見ると知らんぷりして下手くそな口笛を吹いてごまかしていた。
そう。壊したのはくーねだ。
手回しにハマったのか一日中回しすぎてその自前の怪力と相まってぽっきり折ってしまったのである。
因みにアンテナも伸縮させ続けたくーねが折った。
なのであのショッピングモール以降、ラジオを一回も聞けていないのである。
出来ればどこかで調達したい。
「うーん。でもここら辺に売ってそうなところあったっけな~?
あっ!そういえば少しルートは外れちゃうけどホームセンターがあるよ!そこまで大きい店だったしあそこにならあるんじゃないかな?」
「よしっそこに行こう!ミカ!案内よろしく!!」
いままで知らんぷりしていたくーねがミカの言葉に食いつく。
やはり壊してしまった事に罪悪感があるのかもしれない。
「これでまた回せる~~」
違うわこれ、新しいの欲しいだけだ。
「じゃあ明日からはちょっとルート外れてそっちにいこうか!」
~~~~~~~~~~~~~~~
「エイタ君!そっちに行ったよ!『穿てっ!ロックシュートッ!』」
「あっぶな!当たったらどうするんだ!」
「大丈夫だよ!コントロールには自信があるから!」
ノリノリで何かの詠唱を唱えたミカがハンドスコップで掬った土を投げ飛ばす。
俺に当たらないギリギリを通り過ぎていった土は、弾丸のように鋭く尖り標的に向かって進み、そのまま魔獣の体へと突き刺さった。
「ご、ごごぉ!?ぐぅう」
「ナイス!よし、これで終わりだッ!」
体内に土がめり込んだことで動きが止まった魔獣に炎を纏わせた拳を振るう。
ドスン と重い一撃が入りビクンッと痙攣した魔獣はボロボロと崩れ落ちていく。
コロンと地面に落ちた魔石を回収しつつ振り返るとくーねがたっていた。
「二人ともお疲れー。結構よかったよ~」
「う~、貫通させるつもりだったんだけどな~やっぱまだまだ詠唱が足りないのかな?」
まあまあ危険な技を放っておきながらどこか不満気な顔をしている。
感情が乗ると威力が上がるとは言っていたけど詠唱すればいいってもんでもなさそうだがどうなんだろう。
正直かっこいいから羨ましい。
「ミカはよくやってるよ?術師の才能あると思うし。威力はそのうち上がっていくんじゃないかな?」
「えへへ~そうかな~
ねえエイタ君!術師だって!私魔法使いになるの夢だったんだ~」
「よかったね」
くそっ、こいつ分かってて言ってやがる!
実は俺は術系の攻撃ができない。
ミカが扇子を持っている理由でもあるのだが、俺はあの心核の能力を十分に発揮できなかった。多少涼しい風を出せるのが精いっぱいだったのだ。
以前ハンドスコップを借りた時もミカがすぐできた土飛ばしができなかった。
くーねが言うには単純に個人の適正の差だという。
つまり俺には魔法使いのような才能はないのだ。どこまで行っても殴る蹴るしかできないという・・・
いやいやまだ決まったわけじゃない!諦めなければきっと出来る!
現在はミカが言っていたホームセンターを目指している途中。
そろそろ目的地も近くなってきたというころ。
くーねに手渡した魔石の浄化を待っているときだった。
「あんたたち、そこでなにやってるんだ?」
「?!」
急に声を掛けられた事ですぐに戦闘態勢を取る俺たち。
「あっ、驚かせてしまって済まない。えーと、君たちは流れ人かな?
ここらへんで見ない顔だ。」
そこに立っていたのはボロボロの衣服に身を包み、体のあちこちに痛々しい傷を残している青年だった。
「「ひ、、、」」
「ひ?」
「「人だあああーーーーーーー!!!!!」」
~~~~~~~~~~~~~
「すみません!久しぶりに生きてる人を見たものでつい興奮してしまい・・・
所で失礼ですがあなたは生きてますか?」
「あっはっはは、面白いこと言うね君!大丈夫、僕はちゃんと生きているよ。まあ見た目はこんなんだけどね。」
そういうと服の下からのぞかせているキズを少しだけ見せてくれる。
腹を切り裂かれでもしたかのようなとても痛々しい古傷だ。
「それにしても君たち凄いね、そんな若いのに三人で外を?どこから流れてきたんだい?」
「流れ?えーっと俺たちは・・・」
「あーごめんごめん。言わなくていいよ。詮索はマナー違反だったね。」
どんなマナーがあるかはしらないが、正直「二年間止まっていて最近目覚めたんです!」なんて言えるわけないので助かる。
それに流れって、さっきも流れ人と言っていたし、そういえば手紙にも同じ単語があったな。放浪者的な意味なのだろうか?
君達見るからに訳ありそうだもん。突いたらヘビが出そうだ」
そういって笑っている青年を前に俺たちは三人で顔を突き合わせこそこそ話を始めていた。
「どどどどうしよう!人に会った時のことなんてなんも考えてなかった!」
「私もわかんないよ!とりあえず世間話でも・・・」
「滅んでなくてよかったー」
「ていうかあの人大丈夫な人なのかな?めっちゃボロボロだよ!」
「腹にもすんごい傷あったよな。ただもんじゃなさそうだ!」
「歴戦ってかんじだね!」
興奮しているからか既にこそこそでは無くなっている俺たちに呆れたように、遠慮がちな声がかかる。
「えーと、全部聞こえてるよ?」
「やべっ、じゃなくてこれは失礼。えーと、あなたはいったい?」
「僕かい?僕は遼太郎、この先にある基地で暮らしてるんだ。
今は定期調査の途中で君たちを見つけたんだ。」
「基地?!基地があるんですか!?そこにはあなた以外にも人が?」
「おっっと、びっくりした~。そんなに驚く事かい?基地くらいどこにでもあるだろうに」
俺の反応を大げさだと思ったのか困惑した様子だ。
だがしかたないだろう。なんせ先ほどまで俺たち以外滅んでいる可能性だって考えていたんだ。
それがまだいっぱい人いるよとなれば驚きもする。
「キミたち基地に行った事ないの?よかったら案内しようか?」
「エイタ君、これチャンスだよ!基地に行けばいろいろ分かるかも」
ミカが俺にだけ聞こえる様にこそこそと耳打ちしてくる。
そうなんだよな。手紙ではわからないことを実際に生き残った人から話を聞けるんだ。より世界の現状を知ることができるはず。
問題があるとすれば・・・
「この人本当に信用して大丈夫なのか?なんかそこはかとなく何かを感じるんだが。」
「うーん、それはちょっとわかるんだよね」
「そう?私は全然わかんない!」
また円陣を組みこそこそと話し合う。
くーねは感じていないらしいが桐島さんは俺と同じようになにかを感じ取っているっぽい。
青年、遼太郎はまたか、と困ったように頬を掻いていた。
「まあでも基地があるってわかっただけでも収穫だ。
別に今困ってるわけでもないしここはスルーでいいな?」
少ない話し合いでまとめた結論を述べると、くーねもミカもコクコクと頷く。
それを確認した俺はなるべく笑みを浮かべながら遼太郎に向き直った。
「えーと、遼太郎さん?案内してもらえるのはありがたいんですけど・・・私たちは行かなくてはならないところがありまして・・・」
「そっかそっか、気にしなくていいよ。事情は人それぞれだからね。
それじゃあ僕はこれで。君たちに旅のご加護があらんこと」
そう言うと遼太郎は歩いて行ってしまった。
「いっちゃった」
案外あっさりと立ち去って行ったことに拍子抜けする。
「やっぱり悪い人じゃなかったんじゃない?」
「俺も悪い人だとは思ってないよ、ただ・・・
なんていうか変な感じがしたんだよな」
「あれなんだったんだろうね」
二人してうんうん唸っているとくーねが何かを思いついたかのように「あっ」と声を出した。
「どうしたんだくーね。お昼ならさっき食べただろ?」
「私を食いしん坊キャラかなんかだと思ってる?!そうじゃないよ!
二人が感じてる違和感の正体が分かったの!」
その場で静かに目を閉じるくーね。そのあとすぐにカッ と目を見開く。
「!?」 「ぅう」
目の前にいるくーねは、まるで先程の人の不思議な感じを何十倍にも濃くしたような、そんな感じだった。
「こ、これだ。この感覚。これはいったいなんだ・・・?」
「やっぱり!これを感じ取ってたんだね!」
違和感の正体を確かめられたくーねは直ぐにその謎の気配を収めていく。
「エイタ達が感じ取ってたのは一言でいえば核力だよ。」
「核力?あれが?」
「うん!というより二人からも出てるけどね。
心核をもっていたり、核力を扱えたり、そういうのに慣れている人にある独特の雰囲気を感じ取ってたんだよ。」
「うーん、強者のオーラみたいな感じなのかな?」
ミカがまた独特の解釈をしているが、だいたいそんな感じの気もする。
そして、それを感じ取れるようになったということは、あの人は心核を持っているか、核力を扱えるという事なのだろう。
わかりやすいようにこれからはオーラとでも呼ぶか。
あれ、ていうことは別れずにいた方良かったか?
まあどのみちホームセンターにはいかなくてはならなかった訳だしいいか。
なんにせよ、あの感覚は忘れないようにしておこう。
「気を取り直して、ホムセンに向かおうか!」
「「おー!」」
そしてミカの記憶を頼りにホームセンターへと進んでいき、遂に目的地へと辿り着く事ができた。
鉄格子が辺りを囲い防壁のような役割を果たしている。
まるで内と中が逆転した牢獄のような場所。
そこには、
「おっ!さっきぶりだね!君達の目的地ってここだったんだ!」
さっき別れたばかりの遼太郎がいた。
そして、
「基地ってここのことかよ!」
目的地のホームセンターは基地へと改造されていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~
基地に入って最初に感じたことは絶望だった。
この基地の長であるという人に案内してくれることとなり、遼太郎を先頭に歩いている途中。
通路には今にも死んでしまいそうな人が床に倒れるように寝ていた。
また違うところには膝を抱えてうずくまっている男性。
別の所には一心に天井の虚空を眺めている人。
はっきり言って地獄のような空間だった。
ミカも口を押えてなるべく周りを見ないようにしている。
表情を見るにかなり気分が悪そうだ。
くーねの方は表情こそ変わってはいないが、決然とした雰囲気を感じる。異世界にきて俺たち以外の人と会うのは初めてのはず、なにもやらかさなきゃいいが・・・。
「あ、あの遼太郎さん、ここって・・・」
「ん?ああ、あそこらの人たちか?あれはみんな休んでるんよ。もうすぐ夕方だからね。」
「は、はあ、休んでる。ですか。」
適当に数えても百人を超える人がいた。
よそ者が珍しいのかみんな俺たちを見ている。
ある人は怒りの視線を。
別の人は憐みの視線を。
さらには好奇心や無関心、見定めるような視線まで。
様々な視線が入り混じり向けられる。それになんだこの違和感は?
ものすごく居心地の悪さを感じていると、先導していた遼太郎が扉の前で立ち止まった。
「着きました。この先に基地の長がいます。
私はここまでしか案内できませんが、話は既に通ってますので、どうぞ。あっ、飼い犬はこちらで預かります。」
基地に入ってからというものの「ぐるるるぅ」と唸っているポニーを預ける。
今にも嚙みつきに行きそうなんだが大丈夫か?
扉を通ると長い廊下だった。
しかし先ほどまでの空間とは違い、どこか人の手が入ったような、綺麗な感じがした。
奥へと進んでいくとひときわ豪華な扉がる。
十中八九この扉で間違いはないだろう。
一度顔を見合わせた俺たちはお互いに頷きあうと扉をノックした。
少し間があった後、「はいりなさい」と聞こえてくる。
一応「失礼します。」と断りを入れ扉を開くと、
「ようこそいらっしゃいました!私はこの基地を治めさせていただいてます。東間と申します!」
少しふくよかな男性が元気に出迎えてくれた。
先程の遼太郎よりも数段多いオーラを放ちながら。
豪華絢爛となではいかなくとも質のいいものが揃っている部屋で、長いソファに案内された俺たちは俺を中心に三人が並ぶ様に腰を落とした。
向かい合うように反対側にある大きいソファに東間が一人、同じように座る。
「まずは、わざわざお越しいただきありがとうございます。」
笑みを浮かべながらそんなことを言ってくる。
どういうことだ?別にお礼言われるようなことはしてないのだが。
「えっと、こちらこそ急な訪問なのに受け入れてくださりありがとうございます?」
「はっは、堅苦しくしなくても大丈夫ですよ。私もそこまで偉い立場の人間ではありませんので。」
「あ、そうなんですか?」
「ええ、いくら基地の長と言っても私はただみんなの頑張りに乗っかってるだけみたいなもんですからね。
みんながいてくれるからこそ、安心して基地の運営ができるのですよ。」
東間は優しく微笑みながら話している。
運営なんてしたことないけど長ってだけで偉いわけではないのか。
まとめ役みたいなものなのかな?
「それで、皆さんはどんな御用でここまで?」
少しだけ目を細めた東間が要件を聞いてくる。
あらかじめ決めていた予定通りに、ミカの家に向かって旅をしている事。ラジオが壊れてしまった事、近くにあるはずのホームセンターで調達するために目指していたことを話す。
一通り話を聞いた東間はにこやかに笑っていた。
「そうですか!そうですか!それはとんでもない偶然でしたね!いやーまったく面白いこともあるもんだ。
ラジオならまだ予備がありますから譲って差し上げましょう!」
「! ありがとうございます!助かります!。」
「なに、困ったときはお互い様ですよ。それより今日はもう泊まっていくといいでしょう。日も暮れ始めてますし。」
俺たち三人の顔を流し見た東間は立ち上がり、部屋の奥にある扉へと進んでいきながら提案してくる。
「え、いいんですか?その・・・ご迷惑では?」
「迷惑なんてとんでもない!それにラジオも用意するのに時間が掛かってしまうかもしれないからね。
今まで外にいたのでしょう?今日くらいゆっくり休んでも罰は当たりませんよ。」
そういわれると断るわけにはいかないな。
二人も特に異論はなさそうなのでここは甘えるとしようか。
用事があるからと部屋の奥へと言ってしまった東間を見送った俺たちは元来た道を戻り遼太郎と再会していた。
「長との話は終わりましたか?」
「はい、それで泊まるように言われたんですけど・・・」
「そうですか、では部屋に案内しましょう。」
えっ、もう?そんな聞いただけですぐに?
俺の疑問を感じ取ったのか遼太郎が笑いながら説明してくれた。
「長のクセですよ。流れ人をすぐ泊めたがるんです。始めこそ急に決まるので慌ててましたがもうすっかり慣れてしまって。」
そういうことか。あの人は誰でも彼でも泊めているらしい。
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私はこの基地で長の補佐を務めております。遼太郎と申します。」
「そういえばこちらも名乗ってませんでしたね。私はエイタと言います。」
「どうも、桐島ミカです。」
それぞれ名前を言い、流れ的に次はくーねの番となったときに俺は思い出してしまった。
こいつが初めて俺たちの前で名乗ったときのことを。
ドヤ顔でポケットに手を入れ何かを取り出したくーねは、それを空中へ投げる。
すると光が照らされ異空間の幻影が映し出される!
ついでにミカの表情もパァとなり、目もキラキラだ!
遼太郎も、遠巻きにこちらを見ていた人達も、みな一様に目を点にする。
キラーン と効果音を響かせながらその場で一回転!
タンタンと動くたびにキラキラのエフェクトが発生する。
ツインテールを風になびかせアホ毛ぴょこぴょこ キメポーズッ!
「キラキラ笑顔でみんなにエール!星空アイドル!くーねたんっ!!」
「ですっ!」と占めると背後でドドーーンと一際大きなエフェクトが爆発し、それはもう凄いことになっていた。
そーいやこいつ自称アイドルだった。完全に忘れてたわ。
ってか前と名乗りの前口上違くない?
扇子を煽り風を送っていたミカが「きゃーー!!かわいいい!!」と興奮マックスで騒いでいる。
あの風送ってたのお前かよ。
エフェクトが収まった後もポーズを崩さずに留まるくーね。
チラチラとどう?どうだった?と視線を送ってくる。
悔しいけどかわいいなもう!
俺も拍手して盛り上げてやろう。
そんな盛り上がりまくってる俺たちを見て遼太郎も、周りの人たちも状況に付いていけずに口をぽかーんと開けていた。
分かるよ。その気持ち。
暫く思考停止していたが「ハッ」と我に返ると、どうすればいいか分からず困った顔で俺を見てきた。
俺にこの状況をどうにかしろと?無理だが?
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