17 外へ!
「なんか出たんだけど」
情けない声でそんなことを言うエイタ。
その手にはユラユラと”白い炎”が揺らめいている。
不思議と熱さは感じることはなく、炎に触れているはずの手の平も特に異常は感じられなかった。
そして思い出す。これが夢で見たものと同じ炎なことに。
しかし今のエイタはそれどころではなかった。
「あわわわっ、どうなってんだこれ!」
炎が出ている右手をブンブンと振り消そうとするが、一向に消える気配がない。
炎が消えないことに焦りを募らせているとバシッとくーねに腕を掴まれた。
先ほどまで驚きの表情を浮かべていたくーねは、まじまじと炎を観察し始める。
引っ張られた関係上くーねに急接近したことにより思わずドキッとしてしまう。
しかしそんなエイタに気づく事もなく、くーねは炎を触ってみたり、自分の手のひらから出した光と見比べたりしていた。
ある程度観察を終えたくーねがふるふると震えながら上を向く。
「エイタ、これは・・・?」
「俺も全くわからんのだが!くーねはなにか知らないか?」
エイタの手を開放したくーねは一歩下がりつつ「そうだな~」と言葉を続けた。
「多分だけど、エイタが出してるその炎、核力で間違いないと思う。」
「核力ってさっき話してたあれか。ん?なんでそれが俺の手から出てんだ」
「うーん、それがわからないんだよね~。世界が違うからかな?なんか今まで見てきた核力と違う感じがするよ。こう、無理やり出してるような?不安定な感じなんだよね。
それに今のエイタが核力を出せるはずがないんだよ。心核を手にしてからこんな数日で扉が開くはずがない。体が壊れちゃうよ」
「と、扉・・・いやまさかな」
いろいろと考察し始めているくーね。そこから出てくるワードにエイタは心当たりがあった。ありありだった。
だって今日の出来事だもん。
エイタの呟きを聞き逃さなかったくーねがぐいっと距離を詰めてくる。
こんなに近づかれるとドキドキしてしまうからやめてほしいのだが。
「何か心当たりがありそうだねっ!」
「そそそっ、そんなことないぞ!心当たりなんてない!ああ!あれは夢だったんだから!」
「夢・・・?」
咄嗟にごまかそうとしてしまった。
ほんとは自分でももう気づいている。この体がなんだかおかしいことには。
夢の話だけじゃない。
目が覚めた時には体が高熱を発していたし、手からは炎がでてしまった。五日間寝ていても体に異常はない。
それに何より、魔獣に受けたダメージが全然残っていないのだ。
多少腹のあたりが痛むのはあるが、でもそれだけ。普通あれだけ攻撃を受ければ骨折どころではないはずなのに。
だからくーねに正直に話すことにした。もしかしたら何か知っているかもしれないし。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「なるほど~夢の中にあった壁と扉。エイタはそれをこじ開けようとしたと。」
ふむふむと頷きながらエタイの体を観察する。ジロジロと見られることに慣れないからか凄くぞわぞわしてしまう。
「それ、夢じゃないと思うよ。じゃあなんだって言われると答えられないけど、、、まあ精神世界だとかはよくある話だし・・・とにかく、エイタはその心核の力で扉をこじ開けちゃったんだよ。それならこの不安定な核力にも納得だ!」
「やっぱりあれはただの夢じゃなかったのか・・・ってか精神世界がよくある話ってくーねの世界どうなってんだよ」
一人納得してウンウン頷くくーね。正直気になる話がいっぱいあったのだが今はそれよりも、
「なあ、この炎ってどうすればいいの?」
「ん?うーん、レアケースすぎて正直わかんない!けど元が核力なんだし仕舞えるんじゃないか?」
「仕舞う、、、」
いまだ手のひらの上で燃えている炎に視線を落とす。
一度深呼吸して心を落ち着かせ真剣に見つめる。
(核力、、、くーねが使ってた力、これがあれば俺も戦えるのか?いや、違うな。俺は戦いたいんだ。そのためには・・・)
手を力強く閉じる。潰された炎が指の隙間から溢れる、が、気にすることなくそのまま炎が消えていくのをイメージし続ける。
すると徐々に炎が小さくなっていった。
再び手を開いた時にはそこにはなにもなかった。
具合を確かめるがまるでいままで何もなかったかのように手に異常は存在しない。
それを確認したエイタはくーねに真剣な表情をして向き直り、そのまま頭を下げた。
「頼むっくーね!俺に、戦い方を、核力の扱い方を教えてくれっ!」
「いいよ」
「やっぱそうだよな、でもそこをなんとか!って、え?いいって言った?」
即答だった。正直ダメもとだったのだが。仲間になるのも、一緒に戦うのも渋っていたくーねだ。こんなお願いは訊いてくれないと思っていた。
しかし以外にもくーねは即答で答えてくれた。どうしてだろう?
「なんでエイタが驚いてるのさ?」
「なんていうか、断られると思ってたから・・・」
そういうとくーねはぷふっと吹き出した。
急に笑い出したくーねにどういうことだと視線で訴える。
「ごめんごめん、そうだよね。今までの私だったら断ってるもんねっ!そりゃそうだ」
「ということはやっぱり遠回しに断ったり、わざと情報を言わなかったりしてたんだな」
すると満面の笑みで「うん!」と頷くくーね。とても可愛らしい笑顔だがなぜ今その顔になるのだ。
「巻き込みたくなかったんだよ。私の進む道は危険だから。ましてやエイタ達はこっちの世界の人なわけだし。本当は二人を送ったら別れるつもりだった。」
「じゃあなんで俺の願いを了承してくれたんだ?」
くーねは一度エイタと目を合わせた後、胸のあたりに視線を反らした。その流れのまま右手に移り、最後に星空へと彷徨わせる。
「エイタは・・・エイタの力は”異質”だからね。ちょっとほっとけなくなったって言うか・・・それにこのままじゃエイタ自身が爆発しちゃうし・・・」
急に突拍子もないことを言うくーね。
「そ、そうか、俺って異質なのか・・・ん?今爆発するって言った?」
「じゃあ簡単な制御だけは今教えようかな」
「え、ちょっと待ってよ。いや教えてくれるのは嬉しいんだが、その前に俺って爆発するのか?!ねぇ!なんで目を反らすんだ!くーね!!」
その後、結局爆発については教えてくれなかった。とりあえず冗談ということにしたエイタはくーねから核力を制御するためのレクチャーを受けていた。
「そうそう、そんな感じで集中させると大体できるから!」
ただ一つ問題点があるとすれば・・・
「うんうん!グッ って感じ!ぐーーとするの!そうしたらぐわっー!ってなるから!」
くーねの教え方が感覚的すぎることぐらいか。
「こ、こうか?うーん全然できない・・・なあくーね、いやなんでもない」
それから日が昇るまで練習は続いた。
「うおおおぉぉぉおお!!なんかきそう!うぬぬぬぬ!!」
「その調子だよ!もっと踏ん張れ!!さぁ絞り出すんだエイタよ!」
「ふぬぬぬ!うううう!!」
勘違いしてはいけない。これはただ核力を再び出そうとしているだけ。
「ぐぬううううう!!」
頭に血が上っていきどんどん顔が赤くなっていく。
そして遂に・・・
ボンッ!
「ふんふふーん、今日の朝ご飯は贅沢にトマト缶使っちゃおう!それにしてもエイタ君もくーねたんちゃんもどこ行ったんだろう?」
いつもよりちょっと早起きしたミカは今、朝食の準備を進めていた。
昨日ここを出ることが決まったので持っていけないであろう食料をふんだんに使いカセットコンロで調理を進めている。
一番に起きて豪華なご飯を作り驚かせようと思ったら二人ともすでに起きていたことにちょっぴり凹みつつも、まあでもご飯はバレてないから驚いてくれるよね!と。まさか二人とも早起きどころか寝てすらいないとは思いもしないだろう。
「ひき肉があればミートソースにできたんだけどな~っと、よし!これで完成!あとは・・・」
ミカが作ったのはトマト缶を炒めて茹でた麺と絡めただけの簡単なパスタだ。しかしこの世界ではなんとも豪勢な食事である。
あとは盛り付けるだけとなったところでちょうど足音が二つ聞こえてきた。
「ん?あっ!エイタ君おはよう!くーねたんちゃんも一緒だったんだね・・・って、ええええぇえぇえぇえ!?!?」
エイタを見るなり絶叫を上げるミカ。それはなぜか・・・
「エイタ君!?その”眼”どうしちゃったの?!”燃えてるよ”?!」
「あ、おはよう桐島さん。なんか良い匂いするね」
「ミカー!おはよー!」
「え?うん、おはよう・・・じゃなくてっ!眼!眼が燃えてるって!炎出ちゃってるって!大丈夫なの?!?」
そう。あのあと ボンッ と炎を出すことには成功したエイタだが、出てくるところが問題だった。なんと頭全体が燃えるように放出してしまったのである。
なんとか炎を押さえることは出来たが、左目からは未だに炎がちょろちょろと漏れているのである。
そのうち消えるはず・・・多分。
「あー、やっぱりまだ出てる?」
眼をごしごししながら具合を確認する。眼が燃えてても意外とわからないんだよね。
「出てる!出てるよ!っ!くーねたんちゃんこれどうなってるの?!」
挨拶して早々、おいしい匂いに釣られテーブルを覗いていたくーねはミカに話を振られると名残惜しそうにこっちを向いた。
「それはエイタのあふれだす情熱の炎だよ!告白してきた時に出たから間違いない」
そういうとくーねは直ぐにテーブルに向き直り餌を前に待てされた犬の如く、今か今かと朝食を待ち始めた。
「告白!?え?!エイタ君告白したの?!?!くーねたんちゃんのこと好きだったんだ!てか情熱の炎って見れるものなの?!」
「おおおおい!変なこと言うな!桐島さんが誤解するだろ!」
混乱しどんどんヒートアップしていくミカ。それになんだか不穏な流れになりそうだったので、さっさと事情を説明する。
夢の内容、そして核力が目覚めたことを。
「そういうことか~、じゃあエイタ君も魔力・・・じゃなかった、核力を出せる様になったんだね!おめでとう?でいいのかな。
私はてっきりエイタ君が厨二的な封印されし力に目覚めちゃったのかと思ったよ。」
「なんだそれは、まあそんな間違ってない気もするが、、、とりあえずご飯食べないか?すげーうまそうな匂いもするし、くーねもあんなだし」
「そうだね、あーあー、せっかくみんなを驚かせようと思ってご飯作ったのにエイタ君に全部持っていかれちゃったよ」
ミカは朝食の準備を再開する。と言っても残りは盛り付けるだけだったのですぐにご飯が用意される。
くーねが目の前に置かれたご飯に目を輝かせる。
「うわー!凄く良い匂いがするよ!ミカ凄い!おいしそう!!」
「パスタか!桐島さんこの状況の中よく作れたね!それにうまそうだ!」
「えへへ~ありがとう!いっぱいあるからね!たくさん食べて!」
そして三人は少し早めの朝食を取るのであった。
昼過ぎ、エイタ達はショッピングモールで外に出るために必要そうな物資を探していた。
「エイタ君のそれ、暗いとこだと明るくて便利だね。」
未だに燃え続けているエイタの左目を見て感心したように呟くミカ。
しかし、既に見慣れて来てしまったのかすぐに視線を反らして自分の目的の場所まで行ってしまった。
「暗いところだと視界がぼんやり光るから明かり要らずで便利なんだよなっと、あったあった、これを探してたんだよ」
「エイタ、それなにー?」
エイタは一つの箱を取り出していた。
異世界のものに興味津々なくーねはエイタが探していたというものが気になり近づいてくる。
「これはラジオだよ」
「ん?らじおって?どんなものなの」
「なにって聞かれると困るが、まぁあれだ、遠くの声が聞こえるようになるもの?かな?」
「遠くの声を聞こえる?へーすごいね?心核ではないんだ?」
「そうそう、まあ見とけって」
そういうとエイタは箱からラジオを取り出した。それは電池を必要とせず代わりにラジオに付いているハンドルを自分で回して発電するタイプ。
所謂災害時用ラジオだ。
ハンドルを回し発電し始める。くーねが見つめてくるのに若干やり辛さを覚えつつ発電していく。
しばらく回していると発電確認用兼懐中電灯のライトがチカチカと点灯し始める。
「わわっ!!光った!なんか光ったよ!!凄い!!ねえエイタ!私もこれ欲しい!」
ただライトが付いただけなのに興奮し始めるくーね。そういえばくーねは光るものが好きっぽかったな。と思いつつ「荷物になるからこれ一個で我慢してくれ」と宥める。
プクーとほっぺを膨らませるくーねに苦笑いを浮かべながらも続けてハンドルを回していく。
そろそろ溜まった頃かな?と思い回すのをやめたエイタは、付属しているアンテナを建てラジオの受信開始ボタンを押した。
ジジーーー とラジオが発音し始める。
急に音が鳴ったことでビクッとしたくーねが更に眼をキラキラさせながらグイグイ近づいてくる。
エイタの隣に付き、顔が触れてしまいそうなくらい接近され、かなりドキドキしながらも震える指で周波数ダイヤルをカリカリと回してラジオの帯域を探っていく。
暫くして遂にラジオの放送を受信した。
『ジジーーー・・・こち・・・す・・・まお・・・ま・・・せん。』
「!!」
それは、世界が崩壊して以降初めて聞く他の人の言葉だった。
まったく無人の世界でもしかしたら自分たち以外の人がいなくなってしまったのでは無いかと心のどこかで不安だったエイタにとってこの放送は、まだ自分たち以外にも生きている人がいる。世界はまだ終わってはいないと思えるものだった。
自然、涙が滲んできて、
あ、炎で蒸発した・・・
「うにゅ!?声が聞こえたぞ!凄いこれ!どうなってるの??」
光るだけで無く、人の声まで聞こえたことでくーねのテンションは更に高まる。
しかし残念ながら屋内だからなのか電波の入りが悪く、放送はノイズだらけでまともに内容を聴き取れるものではなかった。
それでもラジオが正常に使えること、ちゃんと放送している人が存在している事を確認でき、一安心したたエイタはくーねにラジオを渡してあげて自分は他の作業に移る。
ラジオを渡されたくーねはハンドルをぐるぐると回しながら「核力使わなくても光るなんて凄いっ!革命だよ!!」とはしゃいでいる。
途中からライトをチカチカ点滅させたり、ラジオのノイズでリズムを取りながら歌い出したりなど、なんか凄いことになっている気がするがなるべく気にしないように作業に集中した。
それから、ある程度の物資を揃えたエイタ達。
最初に用意した3つの大容量バックパックは既にパンパンになっていた。
「これはいる。これは・・・まあいいか。これは・・・おいなんだこれ」
それから少しでも容量を減らすために選別をする。
たまに必要なさそうなものも混じっていながらもあーでもないこーでもないと進めていく。
「誰だこれ入れたの。何に使うんだよ」
「それ凄いんだよ!紐を引っ張ると『パンっ!』ってなってカラフルな紙が飛び出すの!」
「つまりクラッカーだろ。みりゃ分かるよ。」
「くーねたんちゃんそういうの大好きだよねぇ」
その中でも特にいらないものを大量に抱えていたのがくーねだった。
「いらないから元あった場所において来なさい!」と怒られるとブーブーいいながらクラッカーをポケットにしまい込むくーね。
「いや持っていくんかい!」とツッコミたくなる気持ちを押さえつつ選別を続ける。
なんどもいらないものが見つかってはポケットにしまい込んでいくくーねにふと疑問が浮かぶ。
「な、なあ、くーねのポケット。さっきから物入れまくってる気がするんだが、どんだけはいるんだ?」
「たしかに、よくそのポケットからいろいろ出してるよね・・・その割にはまったく膨らんでないけど・・・まさか・・・」
「んにょ?これのこと?」
いままでいろいろと入れてきたポケットに手を突っ込むくーね。
がさごそと中を弄り中からお気に入り心核であるカスタネットを取り出した。さらにまた手を入れると次から次へとどんどん物を取り出していく。
明らかにポケットに入るであろう量を超えている。
何かを察したミカが頬に汗を垂らしながら予想を口にする。
「くーねたんちゃん、それって、もしかしてアイテムボックス的なあれなの?」
「ううん、ちょっとちがうかなー?」
「え、でも凄い量入ってるけど・・・」
「そのポケットも心核なんだろ?どんな能力なんだ?」
大量に取り出した物を丁寧に地面に並べていき、大きく三種類に分けたくーねはポンポンとポケットを叩きながら言った。
「これはね~、種別的にはまあアイテムボックスであって入るんだけどね。入れれるものに制限があるんだ。」
そういうとくーねは分けられた小物郡を一つずつ指差ししていった。
「まずは光るもの!そして音が鳴るもの!あとはその他!前提として手のひらサイズのポケットにすんなり入るくらいの大きさ!この条件にはまるものならいっぱい入る!それがこのポケットなんです!」
「おぉ~?」と拍手するミカ。くーねはドヤッと胸を張っている。
「え~っと、光るものは心核のカスタネットとかあのビー玉とかのことだよな?。音が鳴るのはクラッカーとかってことか、それじゃあこのその他ってのは?」
エイタが指をさしたのは、くーねがその他に分類した物たち。
「それはね~、え~と・・・いらないもの!」
ちょっと言いずらそうにした後に思い切って行っちゃった!きゃー恥ずかしい><みたいな顔をするくーね。
改めてその他の分類を見てみる。
なぞのバネ、なんかのおもちゃらしき物のパーツの一部、ぐちゃぐちゃに絡まった糸、なんか伸びるキーホルダー、エトセトラエトセトラ・・・
「あぁ、つまりごみ箱か」
「ちがーーーう!!確かにたまに捨てるのめんどくて入れちゃったりいろいろ入れすぎてそのまま忘れちゃってもう何が入ってるか私もわからないくらいだけど!と に か く !ゴミ箱じゃないから~~!!」
「エイタ君、女の子のポケットをゴミ箱呼ばわりはちょっと・・・まあ私も少しよぎったけど・・・」
「ちょっとミカまで~~!うぅ~」
「悪い悪い、ほら、このホイッスル上げるから許してくれ。」
エイタは自分のポケットから筒形のホイッスルを取り出すとくーねに渡した。むぅ~と膨れていたくーねの表情が少しだけ和らぐ。
「え、エイタ君、それマイホイッスル?さすがにちょっと引くんだけど・・・」
「ちちちちげえよ!いや違くないけど!これは遊びに使おうと思って持ってただけだ!まだ使ってないからっ!新品だから!」
誤解を解こうとするが、言葉を重ねれば重ねるほどミカがどんどんジト目になっていく気がする。
「ありがとうエイタ。これほんとにもらっていいの?心核みたいだけど」
「ああ!全然かまわないよ!って、え?心核って言った今?それ心核なの?まじか・・・」
くーねに上げてしまった後にまさかの心核だと判明するホイッスル。
心核ならもしかして戦える能力が付いているかもしれないよなと思いつつ、でも今更やっぱり返してとも言えないし、それにくーねの嬉しそうな表情を見たらまあいっかと思えた。まあ俺が持っててもしかたないしな。戦闘系能力な可能性も低いだろうし。
ぴゅーぴゅーと笛を吹いた後にポケットにしまうのではなく、首にホイッスルを掛けるくーね。
「ん?仕舞わないのか?」
「うん!まだ能力が分からない心核だからね!このタイプは常に見てないとどんな能力なのか分からないことが多いんだよ~
だからしばらくはこうやって出しておくの!」
くーねに上げた銀色のホイッスルが黒い制服と合わさり凄く目立つ。上げた側からすると気恥ずかしいんだが、まあ気にしないようにしよう。
そのあとも選別を続けていき、その作業も終わった。
「ふ~ こんなもんかな。」
「意外と時間かかったね。ちょっと疲れちゃった。」
昼から始めた準備も気が付けば日が傾き、夕方になっていた。
「今日は早めに休もうか、そして明日は・・・」
「いよいよ外に出るんだね。」
「ああ、今日がゆっくり休める最後のチャンスかもな」
すこし冗談めかしてそんなことを言う。自分でも外に出ることに対して緊張しているのかもしれない。
「大丈夫だよ!エイタもミカも強いもん!それに私がどんな敵だって倒してあげるからね!」
立ち上がり シュッシュ ととシャドウボクシングを始めるくーね。
エイタ達もくすりと笑いながら立ち上がる。
「それもそうだね。さっ!ご飯にしよっ!最後の晩餐だよ!」
「桐島さん・・・言い方・・・」
ミカの言葉に苦笑いしながらも三人は夕食を食べ、早めに休みに入るのであった。
その日の深夜。
「ね、眠れねえ・・・」
くーねもミカも寝てしまい静かになった時間。
気絶していた時から使っているベットの中でエイタはなかなか寝付けずにいた。それもこれも・・・
「眩しいんだよっ!」
眼に灯った炎が邪魔だったからだ。
眼を閉じていても常に燃え続けているせいで視界が明るく灯されてしまい、しかもゆらゆらと動くせいで視界がチカチカして全く眠れる気がしない。
「はぁ、ちょっと気分転換でもするか・・・」
ベットから立ち会がり、通路へと歩いていく。
そのままトイレへと入り三枚あるうちの割れてない一枚の鏡の前へときた。
映るのは当然自分自身。そして炎。
左目を手で覆う。炎に触れているはずなのに全く熱くない。しかし触っている感覚はあるという不思議。
「これ、傍から見ると結構やばいよな」
外にはまだ生きている人がいると分かったからにはいつまでも目から炎を出しているわけにはいかない。
くーねが言うには今の状態は核力が溢れ続けているらしい。でも基礎能力が育ってないエイタにとっては溜め込まない分逆に安全なんだとか。
溜め続けると俺は爆発してしまうのだろうか?
考えると怖いのでこれ以上はやめておこう。
それより今はこの眼をなんとかしなくては。せめて目立たないくらいにはしたい。
それからは昨日くーねに教えてもらったことを思い出しながら核力の操作を練習する。エイタは今日も眠れない日を過ごしたのだった。
「ふわ~よく眠れた~
ほら起きて!くーねたんちゃん!もう朝だよ!」
「うにゅにゅ~ あと5光年だけ~」
「それは距離!」
騒がしい朝がやってきた。異様にテンションが高いミカによってくーねも起こされる。
くーねが眠い目を擦りながらも身支度をしていると既に済ましているミカが先に行ってしまう。
そのあとすぐに「あれー!」と言う声が聞こえてきた。
なんとか着替え終わったくーねも部屋を出るとエイタが寝ているであろうベットの前にミカはいた。
「ふわ~ どうしたのミカ」
「エイタ君がいないんだよ!」
「なんだそんな事か、ふみゃ~顔洗ってくる」
「あっまって、私も~」
ベットに居なかったエイタのことなんて直ぐにどうでもよくなったのかミカはくーねについていき、二人でトイレへと向かう。そこには・・・
「ぞ、ゾンビ―!?って違う!エイタ君?どうしたのこんなところで」
トイレの出入り口で倒れているエイタを発見した。
駆け寄ったミカが体を起こしてやり、がくがくとエイタを揺さぶる。
「エイタ君死んじゃやだよー!起きて―!」
「うぅ・・・起きたから、桐島さん・・・や、やめて」
「あ、ごめん」
パッ とエイタを離す。揺さぶられたことによって平衡感覚を乱されながらもなんとか立ち上がる。
「大丈夫エイタ君?ふらふらだよ?」
「あぁ、大丈夫、ちょっと眠れなくてトイレ行ってたんだけど、いつの間にか寝てたみたい。」
「ゆ、床で・・・たまに思うけどエイタ君って何て言うか図太いよね・・・って!あれ!エイタ君!眼!炎なくなってるじゃん!」
「桐島さんには言われたくないかな・・・あの炎ね。この眼よく見てみ」
エイタは眼がよく見える様に手で広げる。
眼を覗き込んでくるミカがよく見える。
「あれ!燃えてる!眼の中に炎があるよ!」
「これなら目立たないだろ。大変だったぜ、ここまで収めるのは」
「すごーい、なんか魔石みたいだね。魔石みたいな眼だから魔眼だ」
「ま、魔眼呼びはやめてくれよ・・・」
そんな言い合いをしていると後ろからピピーー!と音が鳴る。
振り返るとくーねがいた。
「二人とも!いつまで立ち話してるのだ?早くご飯にしよっ!」
そういうとくーねは一足先に行ってしまった。
「くーねたんちゃん、さっきまであんなに眠そうだったのに切り替え早いね・・・」
「俺たちも行くか」
簡単に朝食を取ったエイタ達は魔獣と戦った日にゾンビ達が破り侵入してきたシャッターの前にいた。
現在はくーねたちの手により塞がれているが、仮設のドアのようなものが付いており、閂を外せばドアが開くようになっている。
「いよいよだね!」
朝からやたらとテンションが高いミカが今か今かと待ちわびている。
やはりこれから向かう先がミカの家なこともあり気分が高揚しているのだろうか?
「忘れ物はないな?」
自分の背丈に合わない大きいリュックを背負ったくーねがニッと笑う。
ミカもハンドスコップを手に持ちふんすと鼻を鳴らした。
エイタもまたバールを前に出した。
三人顔を合わせて笑いあう。
遂に外に出るんだ。外にはいまだにゾンビがいっぱいいるだろう。それに魔獣も、しかし自然と恐怖感はなかった。だって、
”全部倒せばいいんだから”
くーねとなら、そんなこともできる気がする。だから心配はいらない。
閂を外すとキーっと音を立てながらドアが開き、外の生ぬるい風が入ってくる。
エイタは躊躇いなく外への一歩を踏み出し、
「さぁ、行こうか!」
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