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0.不幸な始まり

俺は嵐の夜にサーデックの地で生まれた。運河が迷路のように走り、赤く咲く花々を縫うように流れるところだ。人は言う、俺が生まれた日、雷が鳴り止まず、闇が引き裂かれるように黒い雲を横切って稲光が走った、と。


母が話してくれた。母が俺を抱いたとき、まだ生まれたばかりの目に奇妙な二筋の光が浮かんでいた――一つは赤、もう一つは青。あの目を見て母は震え、父はただ妻の手をぎゅっと握ってため息をついた。彼らは分かっていた…この末の子はただの人間じゃない、受け入れがたい宿命を背負っていると。


だが、喜びが満ちる前に恐れがやってきた。聞いたところでは、あの夜、父方の一族がひっそりと古い屋敷に集まった。先祖の祭壇にまだ線香の煙が立ちのぼっているところだ。血の繋がりの者たちが囁き合い、相談し、そして決めた:その赤ん坊に血と骨の呪詛をかけねばならぬ、と。理由は単純だ。「あいつは天に選ばれた。あいつが大きくなれば、この一族は喰われてしまう。」


まだ真っ赤な俺の体は、血の匂いが染みついた呪符で縛られた。腕に一筋の刃が走り、血が黒米の碗に落ち、呪われた先祖の灰と混ざった。以来、俺の一生は病と不幸に沈んだ。



---


俺の子供時代は、他のどの子とも違っていた。隣の子らが川辺で駆け回り、はしゃいで魚を追いかける頃、俺はただ家の隅で膝を抱えて咳き込み、体がしばらく熱くなったり冷えたりしていた。


兄弟姉妹は決して一緒に遊んだりしなかった。奴らは俺を「彗星」扱いした。あるとき、軒が崩れて兄貴の足を直撃した時、家族は一斉に俺のせいにした。「お前が外に出たから折れたんだ!」と。母は泣き、父は黙り、俺はただ涙を飲み込むしかなかった。


孤独は幼さから俺を蝕んだ。俺は紙と鉛筆、そして後には絵の具を手に取った。筆を握るたび、鎖に繋がれた体から抜け出すような気がした。俺の描く絵は闇で満ち、血の雨の中に散る桃の花が描かれていた。なぜか分からない、だが幼い心にあの光景が繰り返し浮かんでくるのだ。


音楽も同じだった。父が倉に放っておいた古い楽器を取り出し、音を探りながら弾いた。旋律が鳴ると、何かが俺の中で和らぐ――だが同時に、遠くで嗚咽と叫び声が混ざったような音が聞こえるのだ。



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十二歳の時、俺は自分の目の異常さに気づき始めた。人を見ると、その背後に揺れる影が見える――獰猛な獣の姿だったり、震える光の束だったり。あれが魂だと分かった。俺には陰と陽、両方の世界が見えていた。


最初は怖かった。でも、年を重ねるほどに理解した。あれは「選ばれし者」の印なのだと。そしてなぜ家が生まれた瞬間から俺を縛ったのか、その理由も分かってきた。


サーデック――華やかな花の庭が広がる土地だ。バラや菊が咲くが、肥沃な土の下には骨の穴があり、明命ミンマン時代から残る古い呪文が埋もれている。うちの一族はその秘術の一端を握っていた。彼らは恐れた。もし俺がそれを完全に掌握すれば、束縛から抜け出し、管理の及ばぬ存在になってしまう、と。


俺はたくさんの話を盗み聞きした。叔父や伯父は俺を「疫病虫(邪の者)」と呼んだ。溺れさせてしまえという者までいたが、両親が必死で命乞いして俺を守った。彼らの条件はこうだ:お前は生かす。ただし呪いを一生背負え、と。



---


青春期になっても病は付きまとったが、俺は覚えが早かった。文章を書き、絵を描き、歌い、誰もが驚くほどだ。しかし俺が展覧に絵を出すと額が割れ、作品が燃えた。舞台に立てば照明が落ち、弦が切れた。まるで宇宙そのものが、俺の薄明かりを消そうとしているかのようだった。


疑いが増し、やがて確信した:それはサーデックの血の呪縛が俺の道を閉ざしているのだ、と。才能は溢れているのに、決して正当に評価されない。


一番辛かったのは失敗ではなく、人々の視線だった。皆は俺をハンサムで品があると見る。あの不思議な目を夜空のようだと囁く。女たちは俺に惹かれ、夢中になり、時には狂気じみるほどだ。だが俺は感じられない。


陰陽の目で内側を覗くと、彼女らの胸の中には愛などなく、俺が放つ気質に催眠をかけられた幻だと分かる。彼女らは俺の作る影を愛しているだけで、本当の、傷だらけの俺を愛してはいないのだ。


かつて心を開こうとしたことがある。朝になるとパンを持ってきてくれる優しい娘がいた。俺は本気でそれが真情だと信じそうになった。だがある日、俺は彼女の魂に赤い鎖が絡みついて痙攣しているのを見た――執着の印だ。彼女は俺を愛しているのではない、俺の気質が作り出した輪廻に吸い込まれているだけだった。結果は悲惨だった:彼女は正気を失い、叫びながら川へ身を投げて死んだ。


それ以来、誰も信じられなくなった。俺は天下一の色男になったが、心は永久に孤独だ。



---


十八の年、運命が一つの道を開いた。俺がティエン川のほとりの森で迷い込んだ時、厚くて古ぼけた一冊の書を見つけた。千年の埃を被ったその書は『大法無双』と呼ばれていた。普通の人ならただの石の塊に見えるだろうが、陰陽の目を持つ俺には、頁一枚一枚が魂のように輝いて見えた。


俺は読み、学んだ。たった一年で十の大法を会得した――不死から神鬼の破滅まで、魂を縛る術から意識を現実に変える術まで。呪文の一行一行を唱えれば、天地が震え、サーデックの水が紅い血のように波打った。


だが、力を増すほど俺は孤立していった。力は自由をもたらさなかった。ただはっきりさせただけだ:俺はこの世界に属していない。家族は相変わらず俺を狙い、いつでも首を切ろうとしていた。俺に憧れる者は増えたが、その目は剣のようで、所有するためなら互いに刺し合う覚悟だった。


華やかなサーデックの庭に立ち、風に舞う桃の花びらを見て、幼い頃に呪いに閉じ込められた日々や、俺を愛し狂ったあの娘の狂気を思い返した。心は冷たくなり、一つだけの問いが残った:


「この世に、本当に俺を愛してくれる者がいるのか――それとも全部、運命が作り出した幻なのか?」


答えはない。たぶん、それが俺の人生最大の悲劇なのだ。


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