4 汚れた海
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しかし、デスゲームをやると決めたはいいものの…。
周りの天使はきっと反対する……ことはないはず。
天使は私に逆らわない。
どうしても笑みが抑えられない。
とっても楽しみだ。
でも周りの天使だけでは、力が足りない。
中途半端に誘拐して、世間で問題になると仕事が増える。
…よし、決めた。
協力者を集めよう! 天使じゃなくて、悪魔だったとしても、強い能力があれば天使にしてやる!
逆らうことがあれば、いつでも消してしまう事ができるのだから。
ーーー
協力者1 偽救世主 ディゲクァド
彼の力は強大だ。
何せ人間たちの記憶を操作して救世主だと信じ込ませていたのだから。
一時期(一ヶ月)、だったけど。
あのままずっと、人間に慕われていればよかったのに…というのが本心。
天使数人を引き連れて、彼のもとへ向かう。
彼は今、天空に浮いているこの城を、支える役目をしている。
まあ要するに、この城は彼の力で浮いている。
断崖絶壁の土地に作られた階段を下りて、彼の姿を数十年ぶりに見る。
彼は相変わらずの姿のまま、空中に浮いている、というよりも、見ようと思わなければ見えない鎖につながれてぶらさがっている、というかんじだ。
「いつ見ても美形だねえ。」
私は彼に話しかけるが、反応はない。というかあったら困る。
「君に協力を要請するよ。手伝って? ディゲクァド君。」
彼の方に右手を向けて、パチン、と指を鳴らす。
すると彼に巻き付いていた鎖が一気に砕け、彼の長いまつげから、オリエンタルブルー色の瞳が覗く。
私の左目が恐ろしい火だと言うのであれば、彼の眼は人間の手で汚されてしまった濁った海だ。
かわいそうに。私と同じく神だの救世主だの祭り上げられて、私たちの責任だ。
感想。そう、感想だ。
共感も、同情もしない。
ディゲクァドは今、ついてきた天使から事情を聞いている。
その姿を私は、信者たちには絶対に見せない無表情で、他人事のように一歩下がった目線で見降ろしていた。
最初は何の用だと睨んできたディゲクァドも、状況を理解すると、楽しそうにニヤリと笑った。
どうやら協力してくれるようだ。
私は彼のもとへ歩み寄り、彼に手を差し伸べる。
彼は手を掴んで立ち上がる。
「いまさらお前に協力するのもなんだが、デスゲームとやらで楽しませてくれるのであれば協力しよう。」
私はニッコリ笑って「やったぁ。」と言った。
さて、次は……スカーレットにお願いしよう。
この神にはトラウマなんて概念はないんだと思います。