ジョン、ため息をつく
1話が短いです。
連載じゃなく短編にしてもよかったんですがこちらの方がテンポよく進むかなぁと思って。試行錯誤中です。
全十話くらいを予定。
8/19 ジョンが勤め始めてからの期間を3か月から1か月に訂正。
9/27 館の名を設定したのに合わせて加筆。
(面倒な事になったなぁ)
ジョンはため息をついた。
ジョンはひと月前から菩提樹館で料理人として働いている。その前は街で大衆向けだが名の知れたレストランにいたのだが、館のメイドをしている兄嫁が「辞める子の後釜を探してるんですって」と声をかけてくれたのだ。
リンデン館は首都の外れにある歴史あるお屋敷だ。郊外ゆえに土地は広いし、かつては貴族の持ち物であったらしく審美眼など無いジョンからしても凝った作りに見える。そんな館が大きな戦果をあげた軍人へ、褒章として与えられたのだと聞いている。
上流階級に関わる面倒が気になったが、給料の高さに転職を決めた。ちょうど妻の妊娠がわかったところで金を稼いでおきたかったのだ。
雇われて日の浅いジョンはご主人様一家ではなく使用人のまかない担当だが、料理長が珍しい食材を鮮やかな手つきでさばいていくところを見る事が出来るだけでも転職した価値はあると思う。
当代のご主人様は、隣国との戦争が始まった2年前からほんの数度しか帰宅出来ていないらしい。それ以外のご一家も、最初に奥様に挨拶させて頂いた以外はたまに遠目に見るくらいだ。お嬢様と軍学校の寮住まいだというお坊っちゃまに至っては一度も会った事は無い。
「ジョンさん、何か困りごと?」
ため息を聞かれたのだろうか、振り向くと野菜籠を抱えた老庭師とその弟子の姿が目に入った。
「ああ、坊主か。上から押し付けられた仕事が厄介でね」
「ふぅーん。それ、おいらが聞いたらヤバいやつだったりする?」
小さいながらに世渡りのセンスを感じさせる子の頭をジョンはわしわしとなでる。
「構わないだろう。みんな知ってる事だし」
メイド長がジョンにこの指示を出した時、まわりで他の使用人も聞いていたし口止めもされていない。館の外で触れ回るのは問題だが、同僚に教える分にはいいだろうと判断する。
「実はな、かびたパンと腐った食事を用意しろと言われたんだ」
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