1話 無理だよ…
人生とは不思議なものだ。
いつだって予想していなかったことが突然起こる。
今だってそうだ。
ボクは目の前にそびえ立つ建物を見つめた。
ここは王立学園。
王立学園はその名の通り王家が直接運営している学校で、15歳から17歳の貴族子女が通っている。
ここへ通うことは一種の貴族のステータスとなっており、通っていない貴族子女は留学生を除いて社交界から爪弾きにされてしまう。
よって今現在、貴族令息と貴族令嬢が合わせて300人ほど所属していることになる。
え?人数が少ない?
こんなもんだよ。いや、これでも例年より多いほうか。だって、今年は王子殿下が入学する年だからね。
たくさんの貴族が王子殿下と自分の子供を結婚させるため、王妃様が懐妊したって聞いたらすぐに子供を作る。
その結果、学園がこんな感じに貴族で溢れることになる。
やだなー、通いたくないなー…。
だってボク、貴族じゃないんだもん…。
父は平民、母も平民。
いや、父親はとある侯爵家の血縁者らしいんだけど、めちゃくちゃ遠い親戚って感じらしいからなぁ…。実質平民と変わりない。
確かこの学校に通っている平民の生徒は……2人、だったっけ。つまりボクが3人目だ。
他の人は全員辞めたんだってさ。自主退学。
しかも、全員死亡が確認されている。ちなみに、退学してから全員3日以内に亡くなっている。
最悪だよ。
何でそんなことになったのか1番上の姉さまに聞いてみたんだけど、理由なんだったと思う?
貴族によるいじめ、だってよ。
調査結果により分かったこと。
◯平民である生徒は複数人の貴族子女によっていじめを受けていた。中には命に関わるものまであった。
◯平民の生徒は訴えようとしたが、貴族に金を握らされた役人たちによって訴えは全て握り潰された。
◯逆に覚えのない罪を着せられ、退学させられた。
◯いじめていた貴族子女の親が、自分の子供がいじめを行っていたことが世間にバレるとまずいから、口封じとして平民の生徒を暗殺。
ってことらしい。
いや、こんな学校に平民が入ったら人生終わりだよ、これ。どうするんだよ。
まぁ、この学校に平民が入れるようにするために、ボクが送り込まれたんですけどね。
それは一ヶ月前のこと。
「ルーちゃん、この問題を解いてくれるかしら」
1番上の姉さまに急に呼び出されたと思ったらその一言と共に数枚の紙が渡された。
姉さまがボクに書類仕事を頼むとは珍しい。
姉さまの机の隣に自分の机を取り出して設置し、問題を解きーーーいや、何これ。
か、簡単すぎない?姉さまがこんな簡単な問題をよこすはずがない。
でも、姉さまが解けと言ったからにはちゃんと解かないとね。
全て解き終わって姉さまにその紙を返した時、やっとその紙をよこした意味を理解した。
「ルーシェ」
姉さまに短く名前を呼ばれた。
反射的に背筋を伸ばす。
これは、家族みんなで決めた合図。フルネームを呼ばれた時、公私を切り替える、それがルール。
つまり、今から仕事を頼まれるってことだ。
しかも、姉さまの顔はいつもより険しい。
一体どんな難しい仕事を頼まれるんだろうかーーー
「来月から王立学園に通いなさい」
ーーーはい?
そう、ボクは仕事でここに来ているのだ。
でも、今のところ仕事は何にもないんだってさ。
そう言われて気づいたんだけど、そういうばボクもう15歳だった。
多分、家族からの気遣いかな。
何か理由をつけないと、仕事を休んで学校に通わないとか思われているのかも。
いや、仕事中毒者じゃないよ?
逆にいっつも出かける前に「仕事行きたくないー!」って叫んでるような人間だからね?
ただ、そんな私を家族は「あぁ、建前か……」みたいな目で見ているけど。つまり、絶対に仕事に行きたがってるって勘違いされてる。
でもさ、気遣いの方向が間違ってるんだよ。
こんな平民が生き抜くのが厳しい学校に入って、どう息抜きをしろと!?
無理だろ!退学したい!
まぁ、ちゃんと通うけどね。
ボクに対する暗殺依頼は全部姉さまが握り潰すってさ。
だって、姉さまは暗殺ギルドのギルド長だし。
それに……ボクも一人前の暗殺者だから、そこらへんの貴族や暗殺者に負ける気がしないからね。
なんか急に恋愛もの書きたくなったので書きます。
受験勉強の息抜きです。
書くのめんどくさくなったら消すか、放置すると思います、でも当分は頑張って書こうと思います