モーニングルーティーン
スズメのさえずりで私は目を覚ました。清々しい朝だ。
起きたら直ぐに歯を磨き、コップ一杯の水を飲む。
戸棚から出した陶器のティーポットにドリッパーとフィルターを被せ、深煎りのコーヒー豆を少し多めに投入する。お湯を入れるが、少し入れたらグッと待つ。ただグッと待つ。蒸らすことでより深みが増すのだ。
ガラス製の大開口窓に近づき、猫が伸びをするように背筋をピンと張らせ日光を浴びる。
今日は本当に晴れやかな気分になる朝だ。全身の細胞がビタミンを生成しているのを感じる。
目を潜めると、ここからは都会の様子がよく見える。
高速道路の渋滞や、海を闊歩するコンテナ船に、始発早々の市営電鉄。
私はここからの風景がとても愛おしいのだ。
設定したタイマーが鳴るより先にキッチンに戻り、マグロの解体ショーを今か今かと待ち侘びる子供のように、ドリッパーを眺める。
タイマーが鳴ると同時にそれを止め、お湯を注ぎ始める。焦らずゆっくりと、円を描くような軌跡で注ぐ。
2周したら注ぐのをやめ、一呼吸置いてまた注ぐ。
やめる、注ぐ。やめる、注ぐ。やめる、注ぐ。
ティーポットからマグカップにコーヒーを入れ、香りを楽しみ、ゴクリと飲む。体が活性化してきた。
朝のご飯は欠かせない。
私が生きてきた中で朝食を抜いたことは一度たりともない。
まずは冷凍庫から4枚切りのパンを取り出す。予熱をしっかりとした上でオーブントースターにポンと乗せる。
次に冷蔵庫から卵を取り出しボウルに割り入れる。空気を入れないように慎重に溶く。
コンロの火をつけ、フライパンを敷き、油を入れ、溶いた卵を注ぐ。菜箸でカツカツと、焦げ目がないように溶き卵をバラけさせる。少し温まったら、今日は塩胡椒を入れよう。
レタスにトマト、アボカドにチーズ。木製のボウルに入れ胡麻ドレッシングと共によくかき混ぜる。
ヨダレが出てきたぞ。
黄金色に輝く分厚いトーストに、スパイシーなスクランブルエッグ、私特製のアボカドサラダで今日の朝食は完璧だ。
先ほど入れたコーヒーと共に優雅なブレックファーストと洒落込もうではないか。
これこそが。
37歳独身の私、青木 徹のモーニングルーティーンである。
ご一読いただきありがとうございます。
初の連載シリーズです。頑張って続けます。(コラ)