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第27話:入学とクラス分け/選択授業について





「やった! やったよエクリオ!」

「おめでとうシイラ!」


 面談からしばらく、シイラは無事試験の成績で上位一桁になったため晴れて特待生として入学できることとなった。


 そしてクラスは事前に行われた学力調査で成績順に分けられる。 大して勉強熱心ではない俺の学力はもちろん低いため、シイラとは別クラスだ。


「シイラは一番優秀な一クラス。 で、俺は一番下の五クラスか……まあここには各国の優秀な人材が集まるんだから、田舎でのんびりスローライフしている俺が学力で劣るのは仕方ないね」


 クラスとはいえ基礎授業を受ける時や、イベントなどが行われる時のくくりである。 しかしこの学校は自分たちの研究のために受ける選択授業の方が多いため、クラスはあってないようなものだ。


「でも知り合いがいないってのは少し不安だな……」


 俺の知り合いはシイラ、そしてツナオとフブキくらいだ。

 王族や皇族の二人は王宮で最高峰の家庭教師に教えられているだろうから、もしかしたら俺以外は一クラスかもしれない。


「エクリオくん」

「だからこんなところにいるはずない……と思ったんだけど」


 教室に入ると見覚えのある少年と少女がこちらに手を振った。


「まさかツナオさんとフブキさんがこのクラスにいるとは思いませんでした」

「それはこっちのセリフですよ?」


 ツナオはそう言ってほほ笑む、一方フブキが眉を八の字に寄せた。


「実は私あまり勉強が得意ではないんです……それに人と打ち解けるのも得意じゃないからツナは気を使って試験で手を抜いたんです。 ツナは本当なら一クラスに入れるくらい頭がいいのに……」

「まあ勉強ができることは否定しませんが……今回に関しては答案用紙に名前を書き忘れてしまっただけですよ?」

「……嘘つき」


 フブキに疑いの目を向けられ、ツナオは苦笑いをしている。

 仲良さそうで結構だが、こっちとしてはなんだかカップルのいちゃつきを見せられたようででげっぷが出そうであった。


「まあまあ俺としては二人と一緒で嬉しいよ。 これからよろしく、ツナオ」

「!! こちらこそよろしく、エクリオ」

「……よろしく」


 クラスメイトになるのだからこれくらい気安くてもよいだろうと、俺が口調を砕くとツナオは一瞬驚いたような表情をして嬉しそうに笑うのであった。





 学園は午前中は基礎授業が行われ、昼休みを挟んだ午後は選択授業となる。


「エクリオは選択授業の見学どこに行くか決めた?」


 学食で俺とシイラ、そしてツナオとフブキは一緒に昼食をとっていた。


「うーん、魔法構造と生活魔法は受けようと思ってる。 サバイバルと食用研究会とか魔法工学とかも気になっているかな」


 俺が言うと三人は目を点にした。


「食用研究会ってゲテモノを食べることになるんじゃないの? というかせっかくこの学園に来たのにもったいない気がするけど……」


 シイラは想像して気分が悪くなったのか、食事の手を止めながら言った。


「いやあ、もっと日々の食事を充実させたいんだよね」


 この世界で、というか俺の住んでいる地域の食事と言えば主食はパンか麦。 そして主菜は肉の煮込みか焼いただけのものが多い。


 前世に比べると圧倒的に種類が少なく、このままではこの先長い人生において食事は楽しみではなく餌へと成り下がる予感がしていた。


 自分で色々研究、調査するつもりではいたので丁度良い機会だろう。


「食材はもちろん、ハーブや調味料の種類がこの世界には足りなすぎる。 毎日同じようなものばかりで飽きない?」

「お腹いっぱい食べられるだけで充分じゃない?」

「俺にとって食事は娯楽なの!」


 俺の熱意のこもった口調にシイラは若干引いた様子で頷いた。


「スパイスの種類……食事が娯楽……考えたこともなかったな」


 ツナオはそう呟いたかと思うと、何かを思い至ったのか突然俺の手を握った。


「エクリオ、君はとても興味深いよ。 常人にはない発想をしている……君といればたくさんのインスピレーションを得られる気がするんだ!」


 ツナオは興奮したように言って目を輝かせた。


「僕は君と同じ授業を取るよ。 そして色々話を聞かせて欲しい……構わないだろうか?」

「……好きにしたらいいと思う。 ただツナオにがっかりされそうで怖いから、あんま変な期待はしないでほしいかな……」

「ああ、分かった。 ありがとう!」


 あんまり分かっていなさそうなツナオはともかく、なぜかフブキが向けてくる嫉妬のこもった視線が痛かった。


「フブキはどんな授業を受けるつもりなの?」


 話を変えようと俺が尋ねると、フブキはなぜか悔し気に言った。

 

「私は魔法近接戦術、古武術とか」

「帝国は戦いに重きを置くお国柄だし、体を動かすのが得意なフブキらしいね」

「うん。 でも私だってゲテモノくらい食べられるんだから」


 なぜかよく分からない対抗心を燃やされ、俺は困惑するしかない。


 同じ授業を受けるのはいいが、俺のせいで王族皇族がゲテモノを食べる羽目になったと国の関係者に知られたらどうなるか。 俺は少し不安になったが、こうなってしまった以上やめることを強制もできない。


「エクリオ……大丈夫なのかな?」

「うん、問題になったら逃走の手助け頼むよ」


 シイラも同じことを考えたのか心配そうにするので、俺は転移スキルという逃走経路を確保しておくのであった。








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