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第23話:山神様の贈り物






『¥€$$₩(来たか)』


 聖女と山神の元へ向かうと、上からギリースーツを着たような人が降ってきた。


「お待たせいたしました」


 俺は魔法の酒瓶で酒を生み出す係でしかないので、基本的にやり取りするのは聖女だ。


「こちらが新しいブドウ酒です、どうぞご賞味ください……」


 山神は無言で受け取り、一口飲んだ。


 俺たちは固唾を飲んで山神のリアクションを待った。

 もしもこれで良しとなれば、無事に挨拶は終わる。 しかしダメなら今度は俺の番だ。


 できればこれで済むのが一番良いところだが、そう物事はうまく運ばない。


『€$£₩㎏(美味い……)』

「「やった!!」」


 俺たちは思わず抱き合って喜んだ。


 しかし、


『¥€$¢‰₩£€£(だが一度過ちを犯したのだ。 一つでは足りないな)』


 山神は意地悪く笑った。


「あ、えっと」


 聖女はパニックになってしまったのか、言葉に詰まって何も言えないでいる。


「……失礼いたします。 私は教会の者ではありませんが、縁あって彼女に同行している者でございます」


「もしよろしければ私の故郷、異国のお酒を一献いかがでしょうか?」

『€$₩(……もらおう)』

「ありがとうございます」


 俺はそう言って、魔法の酒瓶を取り出した。


『₩₩(?)』


 思い浮かべるのは前世で旅行した時に飲んだお高い日本酒だ。


「どうぞ」


 山神は瓶をしげしげと眺めて、グイっとあおった。


『£$(う)』


 山神は目を見開いた。


『£℃℃$₩₩€₩₩₩$¥¥¢(うううううみゃああああああい!)』

「うみゃい……?」


 先ほどまで神々しく、厳かであった神から決して出るとは思えない言葉が聞えた気がして俺は戸惑った。


 山神は日本酒を気に入ったらしく、ぐびぐびと一気に飲み干すと余韻に浸るようなため息を吐いた。


『$℃£℃₩㎡㎏(なんだこれは?! ももももうないのか! もっと欲しい!)』


 山神の変りように目を丸くする聖女を横目に、俺はもう一度瓶を酒で満たした。


『£¥£㎡$㎡£㎜(お? この香りは……少し違う?)』

「はい、こちらウィスキーという異国の酒でございます。 先ほどのものより少し癖が強いかもしれませんが、ご賞味ください」

『£$$₩㎎₩(うん! ありがとう!)』

「?」


 やけに素直というか、むしろ子供のような山神の口調に俺と聖女は顔を見合わせた。 しかしそんなことは気にせず、山神はジュースを飲む幼子のようにごくごくと嬉しそうに酒を呑んだ。


『$¥₩㎜$$£㎜㎎㎡$€㎎₩£%£$℃₩‰€¥£㎡㎎$℃€‰€㎡$㎜£㎜₩㎡₩㎜₩¤₩㎜$$%㏄(ああ、これも先ほどのとは違って良い! フルーティだが、深みのある……ああ、たまらん)』


 山神は光悦とした表情で余韻に浸った。


 しばらくすると山神は我に返ったようで、わざとらしい咳ばらいをして俺に酒瓶を返した。


『£℃$‰£(うむ、悪くない供え物だった)』

「誤魔化せると思ってるんですか……」

『$㏄£㏄㎎‰₩¥€㎜₩$£₩(うぉっほん!! とにかく満足した。 聖女の酒も良かった)』

「いいえ! 喜んでいただけて幸いでございます!」

『£℃$‰€¥£㎝£㎡£(ああ、意地悪なことを言ってすまなかったな。 ちょっと脅かしてやるつもりだっただけなんだ)』


 口ぶりから本来は聖女の渡したブドウ酒で満足していたようだ。

 その後の無茶ぶりはジョークのつもりであったらしいが、あの状況では質が悪すぎるだろう。


 俺の非難の知戦に気づいたのか、山神は慌てて自身のツルのような髪をむしって聖女に手渡した。


『£¥£₩‰₩‰£㎡(……詫びにこれをやろう。 私の力がこもっているから植えれば美味い果実が実る)』

「これは……?! ありがたく頂戴いたします。 そして今後国が亡ぶその時まで枯らさぬよう大事に育てていきます」

『£㎜¥㎏£㎜£$£(……そこまでしなくて良いが、まあ好きにしろ。 それでお前にはこれを)』

「え、どうも」


 山神はそう言ってこぶし大の塊を放ってきた。


 いきなりだったので俺は思わず素で返してしまったが、特に気分を害した様子はなかったので安堵の息を吐く。 そして改めてその塊を確認するが、どう見ても茶色の丸い石にしか見えない。


「まさか……精霊石……?」

『£¥$㎡£₩$$㎏(そうだ、その聖女が言う通りそれは精霊石。 まあ大事にしてやってくれ)』

「はあ、分かりました……?」


 聖女の驚きようからして、俺はとても良いものをもらったことだけは理解できる。 しかし俺はその精霊石という物がどんなものか、価値も分からないので反応に困った。


『$¥$‰£¥£$(ではさらば。 向こう十年は安寧が続くことを約束しよう)』


 山神は一方的に言って、地面に溶けるように沈んでいった。


「終わった……?」

「はい、終わりました。 お疲れさまでした。 そして本当にありがとうございました」


 どっと疲れた表情の聖女に感謝されつつ、気になることは色々あるが、とりあえず詳しい話は船ですることにした。


 聖女って思っていたより大変なんだな、と俺は小並感満載の感想をいただきながら聖女と共に山を下りるのであった。







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