第九十三話 アリアとランドルフたちの防衛保護魔法
大型帆船にこれ以上魔物が襲撃しないように、防衛保護魔法を聖女アリアは施す。
魔法で保護シールドを張り帆船を透明のようにして景色に溶け込ませ隠す。
魔物から見えなくするのだ。
ただ、限界はある。
魔法をかけるアリアたちよりも力の強い魔物や、鼻の利く魔物には見つかるかもしれない。
「ランドルフさん。シヴァ、セイレン一緒にお願いします」
ランドルフははいはいと素直に従った。
聖獣シヴァと聖獣セイレン夫婦もアリアの元へ集う。
アリアが聖杖ひとしずくの露を振り上げる。
それぞれの魔法陣が現れ、杖に力を集める。
やがて魔法の金色に煌く水のヴェールが杖から放たれ、上空に噴水のように噴き出し大型帆船中に降り注いだ。
「きれい」
帆船に乗り込むすべてのものが、その魔法の美しさに息を呑む。
「イメージだよ。船にもっと均等に降り注がせて。アリアもう少しだ」
黒の魔法使いランドルフが聖女アリアを励ます。
「はい」
聖杖を両手でアリアが持ちランドルフがその手を支えた。
「あいつ。変わってきたんじゃねえの?」
クラウドがランドルフをじいっと見ながら言った。
「えっ?」
エリザベートもたしかにランドルフが変わりつつある気がしてはいた。
「そうだな」
ルビアス王子もランドルフの顔つきに変化を感じる。
エリザベートの両サイドにはクラウドとルビアス王子が立っていた。
「お前たち甘いな。あの魔法使いに気を許しぎると痛い目見るぞ」
聖獣ジスがエリザベートの前に座って忠告を与える。
「信じ過ぎたら危険だぞ?」
聖獣ジスはジロっとクラウドとルビアス王子を見た。
「そうか。胸にとどめておくよ」
クラウドは素直に聞いた。
軍隊にもいろんな荒くれ者も狡猾な奴もいた。
「ジスの忠告、覚えておく」
エリザベートを裏切ったことのある奴だ。
どうして裏切ったのかルビアス王子はいつか問いただしてみたかった。