第八十九話 私も行くっ! 戦うわっ!
「さあ治ったよ。ボクの優秀な魔法であっという間に毒抜きは完璧だ。それで君はどうするの? エリザベート」
ボクは知ってるよ。
君はただ守られる女じゃないことを。
なあ行くんだろ?
また危険も顧みずに。
「ランドルフ、もちろん私も行くに決まってるっ! 私も戦前へ行くっ! 戦うわっ!」
そうだよな。
エリザベート。君ならそう来ると思ったよ。
黒の魔法使いランドルフは、闘気を燃やすエリザベートを眩しげに見つめた。
「だっ、大丈夫なのか? エリザベート」
聖獣ジスが心配して慌ててるが、エリザベートは立ち上がり体を伸ばした。エクスカリバーを握りしめ、一度振るう。
「大丈夫! 私は剣を振れる!」
エリザベートの痺れは取れていた。
回っていた毒はすっかり抜けきったのだ。
戦おう。人々のために――!
「ありがとう。ランドルフ」
「えっ? ああ大したことないよ」
ああ、もう、やめてほしいな。
そんな笑顔で礼などと。
エリザベートにランドルフは昨今言われ慣れない礼を言われて照れて居心地悪そうにした。
(エリザベートからお礼なんか。サワサワする。くすぐったいや)
「あぁ、良かったですぅ……。エリザベートさんが助かって。エリザベートさん! だいじょおうぶですかあ?」
聖女アリアがしゃがんで乗組員に解毒魔法を施し治療しながら、顔だけを向け無事を確認できたエリザベートを涙目で見つめてる。
「うん、すっかり大丈夫っ! 私、戦うから! 行くね。アリアも頑張って」
エリザベートは聖剣エクスカリバーを握りしめて走る。
キラキラと淡く光るエリザベートの体の中から力が溢れ出て漆黒の鎧は現れまとい兜が現れ、漆黒のマントは海風に翻る。
そして漆黒の勇者のエリザベートとして戦う姿となるのだ。
その後をまだ心配顔な聖獣ジスが再び銀の狼姿になって追いかけて、エリザベートに寄り添いながら走って行った。