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第八十六話 エリザベートの意識は戻らない

 クラウドがエリザベートに口づける。

 意識のないエリザベートに人工呼吸をして、エリザベートを助けようと必死になっている。


 

 

 クラウドが海に沈んでいくエリザベートを抱きとめ、エリザベートを抱えて泳ぎ帆船の方まで戻ってきた。

 聖獣ジスが血相を変えて海に飛び込み、エリザベートとクラウドに泳ぎ寄った。海中でエリザベートを抱きかかえるクラウドの腕から、銀狼の背中に受け止める。

 聖獣ジスはエリザベートを背に乗せたまますぐに海から上がり空を駆ける。ジスはエリザベートと船に戻り、甲板に意識のない動かないエリザベートの体を横たえた。

 


 クラウドは急いで船のはしごで甲板に登り上がり、聖獣ジスが寄り添うエリザベートの元へ走って、膝を着き彼女の状態を確認した。

 エリザベートは意識がない。

 呼吸をしていない。

 海水を大量に飲んでしまっているようだ。 

 クラウドは川や湖で溺れた兵士たちの蘇生の経験がある。


「死ぬなっ!! エリザベート!!」


 クラウドは必死だった。



 クラウドがエリザベートを助けたい一心で人工呼吸をしている。


 その様子をルビアス王子は毒に苦しみながら甲板の床に、動けない体を横たえて見ていた。

 エリザベートが助かるように必死に願った。

 不甲斐ない思いで。

 必死にエリザベートを助けようとするクラウドを見ていた。


「エリザベート! 死なないでくれ!」


 そしてルビアス王子はエリザベートが助かるよう必死に祈った。

 

 

 何度かクラウドがエリザベートに口づけた。

 そして心臓マッサージをする。


「戻ってこい! エリザベート! エリザベート!」

「ううっ……」


 エリザベートの肺に入ってしまった水が出た。


「ゴホッ、ゴホッ……」


 咳き込んで意識が戻る。

 まだエリザベートの体は痺れていた。


「エリザベート!!」


 目を開けたらクラウドの泣きそうな顔があって。

 クラウドはエリザベートを思いっきり抱きしめた。

 エリザベートが助かり心の底から安堵した。


「死んだら許さん。……お前を愛している」


 ぎゅうっと抱きしめたまま、クラウドはエリザベートの耳元で囁いた。 



「良かった」


 一同を安堵が包む。

 ルビアス王子はエリザベートが助かって良かったと心の底から思った。


「良かった。助かって良かった。エリザベート!」


 だが自分が助けたのではない。

 悔しい不甲斐ない思いで見ていた。

 クラウドが、助けたのだ。

 情けない思いが広がった。



 アリアと聖獣セイレンと聖獣シヴァが、毒に冒された人たちを毒消しの回復魔法で癒やし回復させる。


 被害は大きかった。

 乗組員や客の何人もが、こっそり近づいた魔獣巨大ダコの毒の足によって気づかぬうちに刺され毒に冒されていた。


 聖獣ジスがエリザベートの足元に心配そうに寄り添う。

 聖獣バルカンはルビアス王子にぴたっとくっついている。


 そんななかクラウドは立ち上がり聖獣ジスに告げた。


「エリザベートを頼む」

「クラウドお前どこへ」

「まだ終わっていない。決着をつける」


 聖獣セイレンが空中を飛んで、水中に魔獣巨大ダコとともに沈んだはずの戦斧バトルアックスをユニコーンの角の魔法で呼び寄せ持って来た。


「クラウド! バトルアックスだ」

「ありがとうな」 


 クラウドは聖獣セイレンからバトルアックスを受け取ると甲板を走り出した。

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