第七十七話 聖剣雷撃のレイピア
「ルビアス王子、それは聖剣?」
エリザベートも実はルビアス王子の剣が気になっていたが、ゴタゴタ続きでそんな話をする暇もなく。
「ああ。バルカンがくれたんだよ」
ルビアス王子は腰に差した聖剣雷撃のレイピアを固定している革ベルトから鞘ごと抜き、エリザベートの眼前に両手で横に向けて差し出した。
「触れていいの?」
「ああ。君は漆黒の勇者だし。どうぞ」
細身の剣だが白く光り輝き美しい。
クラウドの戦斧バトルアックスの真珠いろとも違った白さだった。
「ジェイダイトって言ってたかな。地上のそれに近いって。バルカンが」
「希少な宝石だ。たぶん本ヒスイのことだな」
「へえ。詳しいねクラウド」
「まあ。故郷のお国柄でな」
クラウドはまた戦斧バトルアックスを磨き始めた。
エリザベートは丁寧に聖剣雷撃のレイピアを眺めた。
「魔法がかかってる」
「おっ、分かるか? そのままだと雷が出るからさ、よっぽどじゃないと魔法は解除しない」
「解除は自分で? ルビアス王子って魔導士の血が?」
「まあ……ね。もう魔法は使わないつもりだったんだけど」
クラウドが戦斧バトルアックスを磨き終わったようで、立ち上がる。
「さあ、どうする? イルニアの鷲ルビアス。手合わせはするのか?」
クラウドは挑戦的な目でルビアスを見た。
ぶつかり合う瞳と瞳。
それは戦士としての二人の因縁と恋敵としてだ。
「私も入れて」
「はあっ?! 君も?」
「いいんじゃないか?」
エリザベートが二人の手合わせに入ることにルビアスはびっくりしてたが、クラウドは乗る気だった。
「二人と鍛錬したらもっと強くなれそうじゃない?」
「互いにクセとか弱点を知り指摘して、直し強化すればもっと強くなれるからな」
「仲間だしね。これからは魔王討伐のために協力しよう」
ルビアスはフフといたずらっぽく笑った。
「んっ?」
「いやあ、面白いなあと思ってさ」
「なにがだ?」
「まあいろいろ」
戦場で対峙した将軍とこうして仲間になったことや、恋敵になっていること。
そしてエリザベートを愛し、共に鍛錬し戦うこと。
ルビアス王子の周りには戦場で戦う女などいなかった。
「行くわよっ!」
「さあ行くぞっ!」
エリザベートが、クラウドが、地面を蹴ってルビアスに斬り込んでいった。
ルビアスも聖剣雷撃のレイピアを握りしめ、地面を蹴った。