第七十ニ話 作戦会議
大きな樫の木で出来た一枚板のテーブルに、宿のベルマンと妻のキッキ、そしてクラウドが作った豪勢な料理が並ぶ。
焼きたてパンに獲れたて海老のボイル、新鮮な魚の煮付けに、イカと牡蠣のマリネやふかしたオレンジ芋などごちそうがところせましと並べられた。
島国でさすが豊富な海の幸に恵まれたパパイナ島である。
新鮮な海鮮が美味そうに出来上がり、香ばしい匂いが鼻腔をくすぐり一同の食欲をそそる。
聖獣たちはそれぞれのパートナーの足元にいて、彼らも一緒に食事をする。
「「いただきま〜す!」」
一同が食べ始めると美味い料理に誰もが和んだ。
エリザベートもルビアス王子もクラウドも互いに何事もなかったかのように接している。
「まずはダンバ。もし行く場所がないと言うならば、私からはあなたには正式に留守のあいだ、私の農園を守って欲しいと思ってるのだが」
ダンバは驚いてフォークに刺していた人参をゴロリと落とした。
「だけんどオラが山賊団に入った罪は?」
「あーそれね、アンタなにも結局山賊の仕事ヘマばかりで出来なかったから、エリザベートには話しといた。贖罪の羊皮紙には罪人がズラリ並んでもう書く欄はないし」
黒の魔法使いランドルフがワインを飲みながら語る。
「……ということ。頼まれてくれる?」
「オラは感激してるだ」
ダンバは嬉し涙を流して喜んだ。
「あとの者は北の大地ルーシアスに向かう。女神イシスがアリアに私を連れてくるように啓示を出したこと、そして魔王が絡んでいそうなことで優先する。いい?」
「ああ」
「もちろん」
エリザベートは皆を見渡した。
あらためて思う。
旅に戦いに向かう心強い仲間が自分に出来たことが素直にエリザベートは嬉しかった。
「その後、イルニア帝国に向かう。ここでも女神イシス様が聖剣エクスカリバーをイルニア帝国の領土内に置くよう神の啓示を出したため。……本当は私がルビアス王子に聖剣エクスカリバーを貸しても良かったんだけど、状況が変わったから。――私はもう、勇者としてもう一度戦うと覚悟を決めた。だから、この聖剣を片時も手放すことは出来ない」
この言葉にはテーブルにつく一同が強く頷いた。
「それでだ。北の大地ルーシアスには、船で向かおうと思う」
エリザベートはずっと考えていたことを提案する。
「船?」
ルビアス王子が眉をしかめた。
「あてはあるのか?」
クラウドはこれだけの人数を乗せられる頑丈な船をそんなにすぐ調達できるか疑問に思っていた。
だが、エリザベートがすぐさま答えを返す。
「ある。明日はいったんオワイ島の私の家に向かい、元海賊の船長の女性と会うことにする」
「まあ! 元海賊ですか?」
アリアはワクワクしていた。アクアマリンの海のような瞳を輝かせている。
――すごい!
海賊の女船長だなんて格好いい。
「その人、今は私と同じ農園主なんだけどね」
「ララのことか?」
犬の姿に変身変化した聖獣ジスがちらりと顔を上げた。
「そう。彼女に、――ララ船長に頼むわ」
エリザベートは決めていた。
あては彼女の持つ海賊船しか考えられない。
元海賊のララが難色を示してもなんとかして頼み込み説得しようとエリザベートは心に堅く決めていた。