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第六十九話 どの想いにも

 どうして、今日なのだろう。


 同じ一日のうちに二度も抱きしめられた……。

 エリザベートは二人の男の人から抱きしめられて、戸惑いを隠せない。

 同時にすごく切なかった。


 ――彼らにまっすぐに想いを告げられた。


 魔王との戦いとか気掛かりなことさえなければ、きっとこの状況は贅沢で嬉しいことなんだろうと思う。


 二人の男性から寄せられた好意、どちらの想いにも応えられず、今のエリザベートには選び取ることは出来ない。

 エリザベートには未練を抱える恋があった。


「正直に言うと俺自身戸惑っているが、亡くなった妻以外に好きになったのは、……エリザベートお前が初めてだ」


 クラウドが胸のうちを話してくれて嬉しい。

 感じるから……。

 この人もたぶん普段はあまり心の奥を滅多に人にさらすことはなかなか無いだろうから。


「ありがとう……クラウド。でも私、まだ忘れられない人がいるの」


 本当だった。

 忘れられるはずなどない。

 アルフレッドをずっとずっと好きだったから。

 今もまだ――。

 早く無くしてしまいたいと、そう思っても、胸のなかにはいまだにアルフレッド大公への焦がれた気持ちが残っている。

 彼に裏切られたのに消えることく、恋心は切なさをともなって奥の方でくすぶっている。


「ああ、知ってたよ。……ただ俺は気持ちを伝えたかっただけだ。エリザベートに知っていてもらいたいと思った。それだけだ。こんなにお前を困らすつもりはなかったんだが、……すまん」


 そういうとクラウドはエリザベートからそっと離れた。

 クラウドの伏せた瞳が切なげだった。

 

 エリザベートはクラウドに抱きすくめられ、密着した肌は二人の体温とクラウドの熱い思いでしばらく温かった。


 彼の温もりが消えていくのを、エリザベートの心のどこかが寂しく感じていた。

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