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第五十三話 魔獣ブリザード

 魔物が姿を消し、一同は緊張が解けた。

 だが一人エリザベートは違う。


「まずいわ。魔王に知られた」


 エリザベートは装備をとかない。

 きっとすぐに魔王がやって来る。


「大丈夫だ。みすみすやられはせん」

 クラウドはエリザベートの肩に手を置く。

「もうアンタは一人じゃないんだ。俺たちがいる。俺を、俺たちを信頼してくれ」


 クラウドはまっすぐに真剣にエリザベートを見つめる。

 エリザベートに強い意志を示す。


「ありがとう。みんな行こう! 先を急がないといけない」


(まずい! ここにいるのが魔王に知られた。次々と追手がやって来る)


 エリザベートは胸のうちでは焦りがうまれた。

 ――ここは危険だ。

 こんな穴倉では戦うには不利すぎる。

 一刻も早くここから離れなくてはならない。

 早くアリアの大事なものを奪ったあの男から取り返して、聖獣シヴァの魔法の鳥かごを壊させる。

 即座に山を下りて戦う態勢を整えなくては。

 切り立った崖や山登りの最中では思うようには戦えない。

 

  

 急ぎ洞窟の入り口に一行が揃いでた時だ。

 魔物はたてつづけにやって来た!

 空から、大きな氷で出来た禍々《まがまが》しい鳥の化け物が、一気に加速してこちらに向かってくる。


「あれは、魔獣ブリザードだ!」


 聖獣セイレンが叫び保護魔法をかける。

 魔獣ブリザードが口から出す何もかもが凍てつく息吹の攻撃から、聖獣セイレンのユニコーンの角から放つ保護魔法で間一髪みんなが守られた。


 だが、何度も魔獣ブリザードが吐き出す攻撃に、セイレンの保護魔法がいつまで耐えることが出来るだろうか?


「モンキー山の魔物は魔獣ブリザードだったんだ。クラウド! 手袋を外して!」

「分かった!」


 エリザベートはこちらから仕掛けることにした。


「アリア! セイレンを手伝って! みんなを保護して」

「はいっ!」


 アリアは呪文を唱えて大きな魔法陣を手のひらから出して護りを固める。

 エリザベートはクラウドの瞳を見る。


「私、クラウドあなたを信じるわ。あなたも私を信じて。あなたが先に炎を放って! 私があとに続くから!」

「分かった! 行くぜっ!」


 そういって保護魔法から、クラウドとエリザベートが飛び出した。

 エリザベートを聖獣ジスがくわえて投げ背中に乗せた。


「ジス!」

「お前の相棒はいつだって俺だろ? エリザベート」


 エリザベートは聖獣ジスの背中にしっかり掴まる。

 あたたかい。

 力強くジスはエリザベートを乗せて駆け出した。


「ジス。よしっ! 行こう! やってやるわ」


 クラウドが思いっきり力をこめて、戦斧バトルアックスを魔獣ブリザードに向けて振り回した。

 バトルアックスからゴオッとものすごい火の柱が放たれ、魔獣ブリザードが包まれる!


 ブリザードが苦しみながら空中から落ちる。


 エリザベートは聖獣ジスとともに落ち行く魔獣ブリザードに向かうと、聖剣エクスカリバーを振り上げて叩き斬った!


 一撃一瞬で魔獣ブリザードから炎が消え、ブリザードは白い氷の花となり砕け散った。

 キラキラと魂が天に昇っていく。


「魔獣は天昇した」

「すげえな」


 クラウドは感心した。

 一同は昇りゆく魔獣ブリザードの魂を天を仰いで眺めた。


「あの魔獣は魔王が本来の姿を歪め作ったものだわ。かわいそうですね」


 聖女アリアの言葉が響いた。

 アリアは魔獣ブリザードに祈りを捧げる。


「どうか安らかに」


 漆黒の勇者エリザベートもまた祈りを捧げたのだった。

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