51/217
第五十話 荒れたランドン公国
「あなたはランドン公国から来たの?」
エリザベートはまっすぐにダンバを見た。
愛する故郷ランドン公国に未練はないはずだった。
あの方が結婚してしまい、その地を去ったエリザベートは未練を断ち切ったはずだった。
聖獣ジスがそっとエリザベートに寄り添う。
ジスの温かさを感じながらエリザベートは言葉を続けた。
「その……、ランドン公国は変わりない?」
あの方のその後を知りたいと思う半面、自分は知ってはいけない気がした。
幸せであって欲しいと思うのに、心のどこかで私をもう思ってはくれないのだと悲しくなった。
「ランドン公国は変わっちまっただ。あなた様が去って……いんや、大公があの悪い魔女と結婚したからかもしんねえだ」
「悪い魔女?」
エリザベートの胸はズキズキと痛んだ。
苦しい――。
心が魂が苦しい。
苦しくてギュウっと痛い。
「アルフレッド大公は暴君になっちまっただ」
エリザベートはダンバの一言に、瞬間息が止まりそうなほど打ちのめされた。