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第四十七話 さあ、いざ、出発だっ!

 アリアはその光景を見て仰天した。

 エリザベートとクラウドが戦っているのだ。

 凄まじい気迫なのに二人が楽しそうなのが不思議でたまらなかった。

 二人がぶつかり合うたびに聖剣エクスカリバーからは氷の粒が火の粉のように飛び散ってはあたりにキラキラと舞っている。

(聖剣エクスカリバーは氷の属性なんだ)

 白魔道士の見る目がつい力を見破ってしまう。


 邪魔しちゃいけないような雰囲気だったが、心優しいアリアは二人が傷つくのを見たくなくて。


 アリアは鳥かごに入った聖獣シヴァをそっとベンチに置いてから叫んだ。


「だめですーっ!」


 いつの間にか家族みたいで好きになってしまったエリザベートとクラウドが、手加減しているだろうけど剣をまみえているなんてなんだかイヤだった。

(死んじゃったらイヤだ)


 エリザベートとクラウドはお互い後ろに飛んで離れた。

 視線は外さない。

 エリザベートは聖剣エクスカリバーをさやにしまった。

 美しいやいばがキラリと鋭く光りながら朝日の光でより輝いていた。


 クラウドはスッと戦斧バトルアックスをおろして豪快に笑った。


「アッハッハッハ! アリアさんには百戦錬磨の漆黒の勇者も敵わないわな」

「そうですね。……お手合わせありがとうございました」


 エリザベートは軽くクラウドに頭を下げ優雅に踵を返した。

 そうしてくるくるっと長く美しい髪をキュッと束ねてポニーテールに結わいた。

 戦いやすいように。

 いつでも戦えるように。

 

 クラウドはエリザベートに見惚れていた。

 正直にいえば女とか男とか超えたところの美しさを感じていた。

 エリザベートの他にはない強さというか見掛け倒しではない勇ましさや美しさに釘付けになっている。

 心奪われたのには自分でも気づいていたし分かっていた。

 ――ただこの時点で、この感情に名前をつけられないことも。





 一行は手早く身支度をして宿の主に礼を言い出発した。

 宿の主人は小麦粉に肉と野菜を詰めて焼いたパンを持たせてくれた。


 宿を出てからしばらく歩いたところで小さな川が流れていたのでそこのほとりで朝ごはんをとることにした。

 みんなは川べりに腰をおろしてエリザベートはそれぞれにパンを渡す。


「山登りに必要な最低限の物は買っておいたぜ」


 クラウドが出会った時には持っていなかった大きめの袋から防寒具などを出した。


「いつの間に?」

「ついさっきだ。宿を出る前にな」


 エリザベートやアリアたちが支度をしている間にクラウドが一人で買って来たという。


「すごい。ありがとう」

「ありがとうございます」

「助かるだ。モンキー山は凍える寒さだべ」


 四人と四匹は美味しいパンを手早く食べて立ち上がる。


「いざ、出発っ!」


 エリザベートは気合いを入れる。


「おうよ」

「はいっ」

「がんばるだ」


 子猿のサンドもジスの肩の上で「キイッ」と鳴いた。

 聖獣たちも気合いを入れる。


「行くぜっ」

「はいっ! 頑張ります」


 立ち上がり各々荷物を持ち上げ肩や背に担ぐ。


 見上げるエリザベートたちの前にモンキー山はそびえ立つ。

 待ち受けるのは魔物たちと山賊のかしらである。

 戦う準備は出来ている。

 漆黒の勇者エリザベートはいつにもまして気が高ぶるのを感じた。

 仲間が出来て力が倍になった気分だった。

 気合い充分、準備は万端だ!


 さあ、行かん、いざ、出発だっ!!

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