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第三十八話 みなは眠りにつきて

 エリザベートは驚いたようなまなこで、まじまじとクラウドを見つめた。

 会ったばかりのこの男になぜか親近感を覚えてしまっているのか心を許しかけてしまうのは、自分と同じように心に傷を負ったもの同士だからかも知れなかった。


 アリアを放っておけないのも同じかもしれない。

 エリザベートにはアリアが妹みたいに可愛らしくて危なっかしいのもあるけれど。


「だからっていつまでもお嬢ちゃん呼ばわりじゃ悪いか」

「……えっ?」

「――エリザベート」


 トクッン……。

 胸の中で音が鳴った。


 なぜかどこかが、ドキッと軽い衝撃がした。

 エリザベートは心に小さなあたたかい光の粒が灯った気がした。

 クラウドが微笑んで、エリザベートはつられて笑った。




 晩御飯の片付けがすんで、皆はとこに就いた。

 部屋は狭くて窮屈だがエリザベートは穏やかな気持ちだった。

 聖獣ジスとアリアと聖獣シヴァの寝息が聴こえ、確かに生きるものの息吹だってホッとする。

 その規則的な呼吸は確かな安心感と、誰かがそばにいてくれる心強さをくれた。

 部屋にはみんなの体から発せられる温もりが存在している。

 エリザベートの心をあったかくしてる。


 エリザベートはふいに聖剣エクスカリバーを持って稽古をしたくなった。


 ――守りたい。

 

 戦い失ううちに大事なものは作りたくなくなっていた。

 それはいつも壊れたりなくなったりするりと逃げていく。


 失くして悲しむぐらいなら最初からない方がいいと思っていた。

 作らない方が、失くした喪失感に悲しまないですむから遠ざかっていた。


 友達も家族も恋人もすべていなくなってしまった。


 聖獣ジスだけは離れなかったけれど、ジスだって女神イシスの大事な預かりものだからいつか天界に帰りいなくなってしまう。


 エリザベートはそっとクワに変化へんげしている聖剣エクスカリバーを持って部屋を出た。


 聖獣ジスが気配に気付き、片目を開けてエリザベートの様子をそうっと見ていた。

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