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第三十三話 凛と立つ

 岩陰に潜む男がいた。

 ワクワクしながらエリザベートたちを見ている。

 強いエリザベートに釘づけになっていた。どうしようもなく心が惹かれている。

 男は黙って見てられなくなった。

 ソワソワしていた。

 男の肩には相棒の子猿が乗っている。

 とても興奮していた。


 木を切り倒すのに斧じゃなく、一見華奢な刀剣でだというだけで驚いた。

 

 元は木こりのその男にとって、華奢なひと太刀で大木を女が叩き斬るなんて見たことなかった。

 いや誰も見たことはないだろうが。


 この男は、エリザベートたちにいつ名乗り出るかは朝から悩んでいて。

 木の上から彼女がゴロツキどもをやっつけてるのを目撃してから、気づけばその姿を追っていた。


 凛と立つ女勇者に惚れ惚れとして。心が感動で騒いで騒いで。どうしても彼女についていきたくなったのだ。


 浅黒い肌の長身の男は近くの岩陰から、エリザベートたちの様子をうかがう。




「ついてくるのは一人でいい。貴殿にアジトに案内してもらいたい」

 エリザベートは、ゴロツキどもになめられないように語気を強めながら命令した。

 エリザベートが選んだのは(エリザベートは後で知ることとなるのだが)ランドン公国軍にいた男だ。

 一番マシそうな男を選んだつもりだ。

 裏切るリスクの低そうな奴を。


「俺たちはどこにいれば」

 あとの者たちが混乱している。

 動揺しながら身の振り方をエリザベートに委ねている。

 懇願している。


「お前たちがもし本当に改心して私に付くのならばランドン公国にゆけ。大地軍にガトヴァン大尉がいるからこの書を持て」

 エリザベートはリュックから羊皮紙と筆を出しサラサラと書き上げた。

「私の推薦状だ。ただし罪を重ねてきたのだから償う気持ちでやれ。覚悟を持つんだな。牢獄に入るか入隊できるかは厳格なガトヴァン大尉が決めるだろう」

 エリザベートは書き上げた推薦状と小袋に入った旅の軍資金を分けてやり一番リーダー格らしき男に投げてやった。


「お前たち! くれぐれも道中に悪事を働かぬようにしろ。け」


「ああ、約束だ。漆黒の勇者様」

 ならず者たちは脱兎の如く駆け出して、あっという間に港の方に消えた。



 パチパチパチパチ。

 拍手しながら岩陰に潜んでいた男が出て来た。

「格好良いじゃねえか。お嬢ちゃん」

「誰だっ!?」

「敵かっ!?」

 突然現れた男にエリザベートたちは身構える。

 聖獣ジスは吠えた。

 そしてブルブルっと身を震わせて、光り輝く狼に変化へんげした。


「オオッ。そいつが聖獣か? 噂に聞きし荘厳な姿だな」

(なに者? この男気配がしなかった)

「まあまあ。おーっと俺を食うなよ。聖獣殿。俺はシェフだ。西の大地から来た。漆黒の勇者エリザベートにぜひ雇っていただきたい。美味い飯作るぜ」

「はあっ?」

 何を言われているのか、理解ができなかった。

 エリザベート一行は、突然の見知らぬ男からの提案にあんぐりと口を開けていた。

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