第二十七話 盗っ人のアジトに行こう
カトリーヌはアリアにここまでの旅の経緯や、なぜ自分を訪ねてきたのかを尋ねた。
「私は村が全滅してからは、ハロトト街の教会に拾っていただきました。そこで白魔道士として修行をしながら、街の皆さんの悩みを聞いて癒やす仕事をしておりました」
「大変だったね」
「はい。そして聖獣シヴァとは、教会の裏の森に薬草を取りに行った時に出会ったのです」
「『やっとお前に会えた』と言われました。シヴァはどこかで戦ったのか弱っていたから、【癒やし】の魔法で回復させている途中だったのに……。大司教さまに捕まって鳥籠に入れらてしまって。そのあとなんとか返してもらって少しずつ【癒やし】て」
アリアはポロポロと涙を流して泣いていた。
「大司教って理解がないのね。こんなに聖獣は優しくて私たちを思いやってくれて頼りになるのに」
そう聖獣ジスを見ると褒められて自信満々の得意げな顔をした。
「そうだろ?」
「ジス、辿れるかな? 糸を。盗っ人の痕跡を」
「だいぶ糸は薄くなってるが辿れると思うぞ」
「じゃあ、行こうか?」
「良いんですか?」
「もちろん」
階下に行き女将のキッキに「出掛けて来ます」と伝える。
「そうかい。カトリーヌもアリアちゃんも二人で出掛けるのかい? これ持って行きな」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
よく冷えた井戸水にレモングラスとオレンジを浮かべた飲み物を、カトリーヌは女将のキッキから大きな水筒にいただく。
「お前さんのオレンジ芋は宿の店さきに並べといてあげるよ」
「良いんですか?」
収穫したてのオレンジ芋は市場で売るつもりだったのだが、アリアのことは放ってはおけない。
「カトリーヌのことだ。また人助けに行くんだろ? アンタは、困っている人は放ってはおけない。きっとそこのお嬢ちゃんだか誰かを助けたいんだろう?」
「はいっ。私が荷物を盗られちゃいまして」
「そうかい大変だったね。だけど腕っぷしの強いカトリーヌがついてれば大丈夫だよ。なにせうちの旦那も助けてくれたしさ。よぉく道中、気をつけて行くんだよ」
「はい。行ってきます」
「行ってきまーす」
宿を出る。
簡単な旅の道具は持った。
カトリーヌはリュックを背負い直す。
アリアは聖獣シヴァの鳥籠を持つ。
「エビパイ美味しかったですね」
アリアがニコニコ話すと深刻さはあまり感じられない。
「うん。美味しかったね」
カトリーヌも素直になる。
『しっかし、呑気な奴だなー。自分のことなのに』
一番前を歩くジスはあきれ顔だ。
「聞こえてますよジス。私だって不甲斐ないのです」
『やれやれ』
「ハハハ」
カトリーヌはアリアの天然さに、なんだか救われる思いだった。
なぜなら盗っ人は旧知のくされ縁のあの男かもしれない。
いやでも過去と向き合うことになるだろうから。