第二十三話 宿ベルマン
カトリーヌは以前から世話になっている宿に向かう。
宿の主人のベルマンは漁師で、海に漁に出た時に魔物に襲われていた。
それをたまたまオワイ島からの定期船便に乗っていたカトリーヌが船上から戦いを挑み、さらには海に飛び込み海の魔物の海竜と戦ってベルマンを助けたのだ。
そのお礼に宿をいつでも利用して良いって言ってくれて。
その好意に甘えさせてもらっていた。
常宿があるのはありがたい。
カカアカラは人気のある街だ。
いつ来てもそこそこの宿が空いているとは限らない。
いつぞや泊まった宿なんて、宿の店主は愛想がすこぶる悪くベッドがカビだらけ。部屋は荒れ放題で汚い。
朝食は腐りかけの魚のスープで最悪の宿だった。
金を返して欲しいと本気で思ったものだ。
二度と来るかと腹が立った。
それに比べたら、ベルマンの宿は天国だ。
まず第一に清潔で、布団はいつ来てもお日さまの匂いがした。
食事は大変美味しく、ベルマンが取ってきた新鮮な魚を料理上手な奥さんのキッキが美味い料理に仕上げる。
焼きたてのパン。
最高だった。
それに加えて宿代は良心的だ。
カトリーヌはすっかり【宿ベルマン】のとりこだった。
ベルマンも女将のキッキもあたたかい人柄で、カトリーヌは二人に会うとホッとするのだ。
二人は親の顔を知らないカトリーヌにとって、両親がいたらこんな気持ちになるのかも知れないと思わせてくれる相手だった。