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最終話 ルビアス王子の眺め

 おいおい。

 どうなっているんだ。

 この海賊船はカップルだらけじゃないか。

 海賊船中にいろんな愛があふれている。



 ルビアス王子はララの海賊船に乗っている。


 魔王を倒したあとも海賊船の航海は続いて、聖女アリアさんの故郷北の大地ルーシアスに向かっている。


 もうすぐクラウドが長年の戦の経験から予想する魔王の残党軍がいそうなせり出した大陸の海岸に着く。

 俺はエリザベートたちと魔物たちを一掃する。


 西国の獅子クラウドが生き返り、心から嬉しかった。

 

 俺の前ではエリザベートに失恋した俺に気を使い、エリザベートとクラウドはつかず離れず適度な距離を保って愛し合っている気がする。


 かえって申し訳ないような情けないような気分になる。


 あとは。

 いいんだけどさ。

 君たちいいんだけど。

 エリザベートとクラウドの二人以外はイチャイチャしすぎじゃないか?


 いつの間にか旅の仲間も増えてジャン兄さんまで海賊船に乗るしさ。

 イルニア国はどうすんだよ。

 次期王様だろう?


 バンッ。


「いってえな。ランドルフ」


 俺は海面を海賊船の欄干に腕をのせて眺めていた。

 俺の背中を叩いてきたのは黒の魔法使いランドルフだ。

 女神イシスより聖剣真紅のセルフィストームをたまわったもんだから意気揚々とやる気出しちゃってさ。


「なにしけた顔して黄昏たそがれてんだよ君は。やるか? ルビアス!」


 いつにも増してニヤッと不敵に笑いやがって。


「ああ、やってやるさ」


 ルビアス王子は聖剣雷撃のレイピアを握りしめる。


「魔法を教えて下さいランドルフさまって言ってみな?」

「言うかっ!」

「じゃあ、教えてやんな〜い」


 黒の魔法使いランドルフはきびすを返して、手をヒラヒラ振る。


「ルビアス。バイバ〜イ」


 おいおい、待てよ。

 魔法は教えては欲しい。


「認めるよ。君の黒の魔法は世界一だ。君には叶わない」

「ほぉ……いいねえ。褒められると俄然がぜんやる気が出るや」


 二人は聖剣を構える。

 そこへ。

 ――ビュンッ!

 二人の間に弓矢が飛んできてマストに刺さる。


「おっ。失敬」


 クラウドが豪快に笑いながら楽しそうに聖弓せいきゅうライトクロスから矢を放つ。

 クラウドの聖弓せいきゅうの矢は、いつまでも枯れずに湧き出る泉の如くどこからかクラウドの手許てもとに現れて出て来てなくならない。


 ゴォッと今度はルビアスとランドルフの間に炎の柱が通っていった。


「あーっ。危ない」

「ごめーん、二人とも! まだ慣れなくて」


 そうか? エリザベートはこの間は戦斧バトルアックスを充分使いこなしていたような。

 エリザベートが可愛らしく謝って笑ったから本当なんだろうけど。

 このままだと俺とランドルフはクラウドの鍛錬の弓に射抜かれ、やたらめったにくるエリザベートの炎の試しうちに焦げかねない。

 

 ルビアスはマストを駆け上がり海賊船の見晴らし台にのぼる。

 遥かな海原を眺めた。

 そして愛すべき仲間たちを眺めた。


 ララ船長はジャン兄さんとキスを交わしながら船舵を取る。

 魔王が来た時に一度死に損ないランドルフたちに回復させてもらったが、その後は船室に逃げ込んで震え上がり戦えなかった部下二人を叱りつけてる。

 二人に剣の稽古を白の魔法使いカルラに命令させてやらせて特訓している。


 マスト下でランドルフが俺になにやら怒鳴っている。


「だからルビアス。君はいつも遅れを取るんだ」


 ムカつくな。

 人が気にしていることをずけずけと心に刺してきてさ。

 黒の魔法使いランドルフはそういやなんでエリザベートを裏切ったんだ?

 ひねくれ屋だがルビアスはランドルフのエリザベートに対する献身的な家族愛みたいなものを感じていた。


 いつか聞けそうだったら聞いてみたいが。

 ルビアスはこの仲間たちが絶妙で楽しくて愛しくて。

 ランドルフのことも好きになっていた。

 わざわざ聞かなくてもいいかな?

 聞いたら傷つけるんだろうな。

 まあいつかそんな理由も知る日が来るだろう。


 あっアリアさんが来た。

 ランドルフとキスした。

 ランドルフはアリアさんに首ったけだ。

 はあ。

 俺にも誰かいませんか?

 まだエリザベートを好きだし視線は追いかけてしまう。


 聖獣ジスが聖獣バルカンとなにやら会議中だ。

 と、思ったらベリーを山盛りにして二人で食べた。

 なんだ。食後のデザートか。

 

 ルビアスは見晴らし台に腰掛けて足を投げ出した。


 聖獣セイレンと聖獣シヴァ夫婦がユニコーンの姿になってルビアスの近くに来た。

 空中を風を切り自由自在に周りながら。

 愛を語らうダンスをするように優雅に楽しそうに駆けている。


 ルビアスは嬉しくて涙が出た。


 こんなに晴れ晴れと清々《すがすが》しく楽しい気分である。

 愛しい仲間たちといられることに感動していた。


 ロマンチストで感動屋で泣き虫なのは家系なのかもな。

 よく考えたら俺たち三兄弟はよく似ているかも。


 あっ。俺は女性には二番目の兄とは違って一途だぞ。



 ルビアスはもう一度眺めを堪能していた。


 寒いが心地よい風がルビアスにも愛しきエリザベートにも仲間たちにも吹いていた。


 大海原おおうなばらを海賊船は力強く進んでいくのだった。




 漆黒の勇者エリザベート完

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