第二百五話 ルビアス目覚める
「おいっ! 起きろ! ルビアス!」
ランドルフは白鍵の呪いの開放保護魔法で、ララ船長と同じように護られ淡く光るルビアス王子の顔を何度も平手打ちでぶっ叩いた。
海賊船の船体の中央の甲板に転がる気絶したルビアス王子にランドルフは必死に訴える。
――まずいよ。
ああっ、まずいったら、まずいよ。
早くあの二人を助けなくっちゃ。
聖女アリアによってようやくランドルフの片腕の骨折が治った。
思いを込めた平手打ちを何度も。
ルビアス王子の頬に。
そうして効果がなくて、そろそろ拳にするかとランドルフは本気で思っていた。
「……君な、いい加減にしろよ。のんびり寝てる場合じゃないだろっ。このポンコツへたれルビアス!」
君、死んでないだろ?
僕たちが協力して作った保護魔法は成功したんだよな?
ランドルフは自分が役立たずな気がした。
エリザベートとクラウドは魔王と海賊船の前方で戦っているというのに。
「ルビアースっ!」
聖女アリアは聖獣ジスに癒やしの回復魔法をかけていた。
微かに本当に微かにジスの息がある気がしたのだ。
死出の旅に旅立つ寸前だった。
――みんな生きているの?
ねえ、お願い死なないでっ!
「……おい、ルビアス。お前もエリザベートの騎士なんだろう? なぁ? もう起きないのか? こんな中途半端なとこで死ぬ気なのか? ああ……。ボクたちの魔法は効かなかったのか。遅かったのか。ふんっ、まあ大体さ。――だからいつも君は遅れを取る」
ガバッとルビアス王子が起きた。
ランドルフに憤慨した。
ルビアス王子は目が覚めて目にした光景。
ボロボロと涙を流すランドルフがいてルビアス王子は心打たれた。
「おいっ、ランドルフ。俺にははっきり君の声が聞こえたぞ。『いつも遅れを取っている』って死出の暗闇に。俺が気にしていることを突いてきやがって。悔しくて死ねなかったさ。……なあ? もしかして君は俺のために泣いているのか?」
「ふんっ! 遅いっ!」
ランドルフはルビアス王子の左頬を拳で殴った。
「フッ。助かる。――目が覚めた」
ルビアス王子はすっくと立ち上がり、エリザベートとクラウドのいる船体の前方に力の限り駆け出した。