第二百四話 エリザベートを奪いにかかる魔王
「うっ、ぐぅっ……」
「フフフフッ」
クラウドはバトルアックスで、眼前に迫る魔王の鉤爪の手を抑えていた。
(――くっそう! たまんねえな、この野郎っ。なんて馬鹿力だ)
はっきり言って戦斧バトルアックスをもってしても効果がない。
繰り出しても炎の柱は魔王の力で消されてしまう。
「てめえっ、何がおかしい!」
エリザベートは大丈夫か?
闇の魔法で動けねえんだろうな。
クラウドはひとまず、魔王の標的が自分であることに気づいていた。
エリザベートが傷つかなければそれでいい。
「エリザベートからお前を奪ったら、あの娘はどんな顔をするかな?」
見た者が凍りつくほどの陰惨さを醸し出すと、魔王はニヤリと笑った。
「はあっ?! やれるもんならやってみろよ! ヴァーノン、てめえっ。俺はお前になんざ屈しないぜっ!」
「フハハハッ、……面白い」
ガラスケースに閉じこもったみたいになって動けないエリザベートに向けて、魔王はクラウドの右手でバトルアックスを握りしめて、左手の鉤爪の手の平をエリザベートに狙い向ける。
邪悪なる紫の炎が手の平の上に作り出される。
魔王は出来上がったばかりの邪心と呪いの魔法の塊の玉を握りしめて、笑いながら勢いをつけてエリザベートに放った!
「エリザベート――!!」
クラウドの悲痛な叫びが雨音よりも大きく、あたりに虚しく響いていった。