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第二百一話 エリザベートを欲しがる魔王ヴァーノン

「フハハッ、少しはやるようだな」


 魔王ヴァーノンは空中からエリザベートとクラウドの前に降りてきた。


 海賊船の甲板に魔界の大魔王ヴァーノンは着地する。

 禍々しい気配の力が魔王ヴァーノンから湯気のように立ちのぼっていた。

 

 

 ――コイツはやべえな。

(こんなここまでの邪悪さを持った奴に会うのは生まれて初めてだ)


 悪党だってちっちゃな善意は人間にはあるとクラウドは思っている。

 だがこいつにはない。

 ひとかけらも微塵も善を感じない。

 クラウドは人間としての危機感を感じていた。


 エリザベートはギリッと奥歯を噛んだ。魔王と何度対面しようが、緊張がほぐれることなどない。会えば会うほどに、憎しみと恐怖が増していく。

 勇者だからこそ、的確に目の前の敵の強さを感じとらえている。


 ――負けない。

(私は負けない。勇者は守るべきものを守るために存在するのだから)


「人間、その娘を差し出せば、お前を生かしてやらんこともないぞ?」


 魔王は舌なめずりをしてから、血色の悪い冷たい腕と手を広げてエリザベートを欲しがった。


「こっちにおいでエリザベート」


 エリザベートに魔王はニタリと裂けた口を開けて見せてから、誰もが怖ろしさにたじろぐ微笑みをかける。


「はっ? 馬っ鹿じゃねえの! 誰がテメエなんかにエリザベートを渡すかってえの!」


 怒り猛け狂ったクラウドは甲板を蹴り上げ跳躍し、戦斧バトルアックスを魔王の頭上に向かって振り上げた!

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