第百九十九話 エリザベートと魔獣ドラゴン
エリザベートは自分の不甲斐なさを少しだけ悔いた。
何度斬りつけても倒せない敵に絶望を植えつけられそうになる。
漆黒の勇者の聖剣エクスカリバーが敵に歯が立たなかったことがあっただろうか。
だけど隣りには一緒に戦ってくれる仲間ができた。
彼は仲間で。
私の愛する人。
クラウドを信じて。
クラウドあなたは私を信じて。
「エリザベート」
「クラウド」
さすがの西国の獅子の元将軍クラウドだって余裕なんかないくせに。
クラウドはエリザベートの耳元で言ったのだ。
魔獣ドラゴンに向かって聖剣を振り斬り続けるエリザベートに戦斧で叩き斬るクラウドは合間をぬって、エリザベートの腰を抱き寄せて頬に口づけてから。
「…………いいんだろ?」
真剣勝負の戦いの真っ只中なのにクラウドは恋人同士が使う甘い言葉をエリザベートの耳元で囁いた。
わざと、だ。
余裕を出すために。
勝利の風をこちらに向かせるために。
「クッ、クラウド! 今夜なんて無理無理無理だよ!」
エリザベートはカアッと頬を赤らめて聖剣エクスカリバーをブンっと振った。
弾みでエリザベートは聖剣エクスカリバーで氷の柱を繰り出したが、それが魔獣ドラゴンの予想の動きではなかったらしい。
クラウドは大声で笑った。
「ハッハッハ! やっぱりお前はすげえや。エリザベート!」
エリザベートの一撃は魔獣ドラゴンの咆哮をあげる口の中に命中して、魔獣ドラゴンは今度こそ完全に氷漬けになった!
パキパキパキッ…。
魔獣ドラゴンが凍りついていく音がする。
すぐに魔獣ドラゴンの動きが止まり空中から真っ逆さまに地上へと落ちていく。
「はあっ! いい加減くたばれー!」
あとに続くのはクラウドの攻撃。
戦斧バトルアックスから炎を斬りつけて魔獣ドラゴンに命中すれば、炎に焼かれ包まれて断末魔の叫びをあげつつ魔獣ドラゴンはやっと天昇していった。