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第百九十四話 魔王降臨

 漆黒の勇者エリザベートは魔王に向かって、ありったけの強き意志と怒りで血奔ちばしる黒曜の瞳でもって睨みつけ叫び怒鳴りつけた。

 まるで己の体全部を武器にするかのように。

 つるぎのごとき鋭さが纏う。


「許さんっ!! 魔王ヴァーノン! 貴様だけは許すものか。私は私のすべてをかけて貴様を倒す!」

「フフフフ。ハーッハッハッハ」


 魔王は可笑しくて可笑しくて堪らないと言うようにエリザベートに向けて高らかに笑い続けた。


 ――おじいちゃん、命を賭して戦場に散った仲間たち(みんな)

 エリザベートの胸に去来するのは彼等の朗らかな笑みと、それから暗転して魔王や魔王に残酷に命を奪われ果てた血に染まるむごい姿だった。

 コイツは私の大切な人達を次々に容赦なく奪っていった。

 魔王は仇だ――。

 こみ上げる激情はエリザベートの全身の血液を沸騰させる。


「愚かな小娘め。血祭りにしてくれるわっ!」


 魔王がカッと目を見開き両腕を上げると、魔獣コウモリ達の大群が魔王の背後に出現した!


 エリザベートとクラウドは聖剣と戦斧を構えて、お互いの瞳を愛おしげに見て一度だけ唇を重ね合わせた。


「必ず魔王を倒す」

「俺がお前を守る」


 武者震いが止まらない。

 エリザベートとクラウドは甲板を蹴り上げて、魔王と魔王軍に立ち向かって行った!

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