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第十八話 船上の噂ばなし
今日の波は穏やかだ。
二十人ぐらいと各々の荷物を乗せられるぐらいの中型の船にカトリーヌは乗っている。
顔に当たる風が気持ちいい。
短い髪がなびく。
追い風を帆に受け船は波を滑るように順調に進む。
聖獣ジスも荷車の上で丸まりながら気持ちよさげに風を受けている。
船上はわいわい賑わって威勢の良い船乗りたちの大声も行き交う。
そのなかでも商人たちの話にカトリーヌはよくわからないが勘なのかなぜだか気持ちがいく。
耳をかたむける。
そのうち気になる話題が聞こえてきた。
「なあ聞いたか? モンキー山の化け物の話」
「ああ。聞いただ。おっそろしいなあ」
「ああおそろしや。おそろしや。勇者さんがいればなあ。退治しておら達助けてくれんだろうけど」
「相変わらず行方知れずらしいだな」
「魔王にやられた傷が元でなかなか治らず死んじまったっても聞くど」
その後も商人たちの噂話はつきない。
延々とパパイナ島に船が着くまで続いていく。