第百八十九話 港町に氷雨が降る
港町ホンに氷雨が降り注いできた。
しぐれ雨は時折強くなったりして、宿の薄い窓ガラスに水滴を打ちつけていく。
濡れたら凍えそうだ。
「良いよねっ? 二人を会わせても」
クラウドを見上げて、エリザベートはにこりと笑い懇願した。
「ああ。仕方ねえなあ」
エリザベートがするこんな笑顔に、クラウドは弱い。
エリザベートの可愛い仕草はクラウドの胸をキュっと高鳴らなせる。
思わず甘やかしちまいそうだ。
(まあそろそろ魔法使いたちも終わっているだろうからな)
実はエリザベートには秘策があって、魔法使いたちと聖獣たちに力を貸してもらっていた。
その魔法が完成するまではこの宿にジャン王子にいてもらう予定なのだ。
あとで白の魔法使いカルラが、魔法の完成の合図とジャン王子の怪我の回復魔法を施すためにやって来ることになっていた。
エリザベートたちは、ジャン王子が海賊船でララと会うのは少し落ち着いてから、明日で良いだろうと話し合っていた。
気絶したジャン王子の闇の刻印を確認した時になる。
エリザベートはジャン王子が眠るベンチを囲んでクラウドとランドルフとルビアスとで策を練っていたのだった。
エリザベートの思いついた秘策に皆が賛同した。
なかでもランドルフが一番乗る気だった。
「いいねえ。魔法使いの腕の見せどころだな」
ランドルフはニヤッと楽しげに笑っていた。
私の信頼する魔法使いの仲間たちで協力する魔法の完成が待ち遠しい。
エリザベートは切なそうに憂いを見せるジャン王子の顔を見ていた。
(そうそう早く会いたいよね! ずっと好きだったんだから)
エリザベートの視線に気づきジャン王子はエリザベートを柔和な顔つきで見やる。
エリザベートはニコリとジャン王子に微笑んだ。