第百八十五話 愛する姿に感動する
おいっ!」
クラウドは憤慨して宿の部屋の扉を開け、隙間からこちらを見ていたジャン王子を睨みつけた。
「なあ? ずっと俺達を見てたのか?」
フッとイルニア国第一王子ジャンは笑った。
笑みを浮かべたジャン王子は、クラウドを馬鹿にしたわけじゃない。
エリザベートとクラウドに感動をもらったから、ジャン王子は涙を流して微笑んでいたのだ。
エリザベートとクラウドの二人の愛を見て、自分の忘れられない恋をあらためて思い出している。
「おい。……なんだよ。アンタ泣いてんのか?」
クラウドは静かになった。
憮然とした表情も態度もやめた。
エリザベートは恥ずかしくて、顔を両手で抑えて下を向いていた。
クラウドと抱き合ったりや、あれこれを見られていたなんて。
(ひゃー。恥ずかしい)
……えっ、ジャン王子が泣いてるってどうして?
「ありがとうっ! 君たちの愛は美しい。俺は感動した。素晴らしい感動をもらった」
ジャン王子はクラウドを思いきり抱きしめていた。
クラウドは突然のことに思考がついていかず、呆然とジャン王子にされるがままに抱きしめられていた。
えっ?
えっ――?
どういうこと〜?!
驚いた顔のまま、エリザベートは二人を見つめ立ち尽くす。
――さっきまではかなり険悪な雰囲気だったよね?
なんでだろう?
ジャン王子という人はどうしたんだろう? とエリザベートは思っていた。
エリザベートは一転して和やかな雰囲気になって、西国の獅子クラウドとイルニア国第一王子ジャンの抱き合う(ニコニコとジャン王子から一方的に抱きつく)姿に、ただ唖然としていたのだ。