第百七十五話 海賊船着岸する
日が暮れ始めている。見渡す水平線の茜や橙色の夕焼けが美しい。
北の大地ルーシアスの南下線の小さな港町ホンに、予定より二日早くララの海賊船はエリザベートたちを乗せて無事に着岸した。
ここの土地はだいぶ空気が冷え込んでいる。
時折り肌に刺さるような北風が吹きつけて、凍てつきそうだ。
エリザベートたちは外套やマントなどを羽織り、船を降りた。
このあたりは厳しい冬が訪れる。人にも動物にもそして植物にとっても、覆う厚い雲で薄暗く冷たく長い冬は水や栄養と何より太陽光が少なく生存するのに厳しいものだ。
山はぶ厚い雪氷に閉ざされ白銀に染まり、流れるはずの川も湖も大海ですら凍りつく。
――いま時期は冬の入りに近しい秋の様だ。
ここはオワイやパパイナ島とは違い、かなり気温が低くて町の趣きが違う。
建物は全体的に重厚である。雪深くなるからかと思われた。
寒さや雪に耐えられる造りで、建物が考えられて工夫された建築が成されているようだ。
港から近場の食堂を見つけて、エリザベートたちは情報収集を兼ねて夕食をとることにした。
ララ船長と白の魔法使いカルラ、部下のブールとレバナは船を守るために下船はせずに、船内で夕食をとる。
聖獣たちも船内に残りララたちと夕食を共にする。
人目を惹きたくなかった。
聖獣たちを連れていれば目立ちすぎて、どこに潜んでるか分からない魔物たちが嗅ぎつけて来る。戦いになれば周りの人々に被害が出る可能性が充分にある。
先刻に魔獣コウモリの大群を見たばかりだ。
警戒する。
緊張感がエリザベートたちを襲っている。