第百七十四話 ぞくぞく集まる魔王軍
「大丈夫だったか?」
聖獣ジスが犬から銀狼の姿に変化してエリザベートとクラウドの元に駆け寄る。
船室にいた者たちも異変に気付いて次々に出て来て二人の元に駆け寄る。
ララの部下のブールとレバナは船室の食料のチェックを行っていたが、慌てて、主の元へ走った。
「頭っ! どうしやした?」
長身で短刀をさげた男が甲板を走って行く。
「頭っ! 大丈夫ですかいっ?」
やや小太りでこちらも短刀をさげて、先ほどの男よりは遅いペースで走って行く。
「アタシは大丈夫だよ。それよりお前ら頭って呼ぶなって言ったろ?」
「じゃあなんて呼べば良いんですかい?」
「ララ船長って呼びな!」
「はいっ船長!」
「はいっ船長!」
部下はビシッと直立してララに忠誠心を見せる。
「ララ。目的地はもうすぐだよね?」
エリザベートはクラウドや仲間たちとララ船長の元に歩み寄る。
エリザベートは顎に手をやり思案し、クラウドは腕を組みながら思案している。
「そうだね。しかしびっくりしたねえ。魔獣に気づかれるかもしれないとヒヤヒヤしたよ」
これから予定通りで構わないのかとエリザベートとクラウドが思案していた時だ。
大きな黒い影がララの海賊船の頭上を覆った。
殺気がした。
「伏せてっ」
「伏せろ」
声を出さずに口だけ動かし、エリザベートとクラウドが手で一同に身を伏せるよう指示を出した。
一同が甲板で姿勢を低くし、上空をいっせいに振り仰ぐと。
先程の魔獣コウモリと同じ姿のコウモリたちが何百と群れをなして勢いよく空を飛びどこかへ向かっていく!
ララの海賊船のすぐ真上を魔獣コウモリの大群が通過していった。