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第十六話 留守
ルビアス王子がカトリーヌの家に行くとカトリーヌも聖獣ジスも家にはいなかった。
(なんだ、いないのか)
意気揚々とやって来たのに肩透かしに会った気分だった。
それに……カトリーヌにまた会いたかった。
あの、美しく力強い光を奥に灯す瞳の少女の顔を思い出す度に、ルビアス王子の胸が切なく疼いて熱さを帯びる。
「なあ、バルカン。二人はどこに行ったのだろうか?」
横のニワトリに話しかける。
周りが見たらとても滑稽だ。
薄暗くなったオワイ島に美しい夕焼けの時間が訪れる。
それは息をのむほどに素晴らしい景色。
「そういやですねえ、ジス様は他の島にオレンジ芋を売りに行くって言ってたような」
「はあ〜っ。……そうか」
ルビアス王子はガックリと肩を落としてトボトボ歩いた。
残念だ。
まさかカトリーヌが留守だとは思わなかった。