第百六十六話 クラウドとルビアス
ララと元海賊たちとの昼食の最中に、ルビアスはクラウドに話がしたいと言われた。
二人は馬車の裏影に行き対峙した。
ルビアス王子は覚悟を決めていた。
「俺はきちんと、……ルビアスお前には言っておきたかった。俺とエリザベートとは恋仲になった」
クラウドは真剣な表情でルビアス王子に宣言した。
何をクラウドに言われるかは、勘づいていた。鈍感な男ではない。
しかし、ルビアスはうなだれて腕を組んだ。
そして顔を上げてから、ハハハと力なく笑った。
「ああ、まあ、分かっていたよ。……クラウド。だが改めて言われるとキツイな」
「――謝らんぞ。それに俺はコソコソしたくないからな。ルビアス、お前がエリザベートを好きなことも知っている。だからこそ告げた」
「俺の気持ちのため……か。あんたずるいな」
「んっ?」
「真っ直ぐで誠実で、潔い男だな。エリザベートをとられたのに、これじゃあ、クラウドあんたを嫌いになれないじゃないか」
「そうか? 俺はルビアスお前が故郷に帰るとでも言うのではと思ったがな」
「俺はイルニア帝国には帰らない。あんたとエリザベートが好きあってるって聞いたって俺は絶対に帰らない。この旅と戦は自身の果たすべき使命、宿命だと感じているし、魔王ヴァーノンとのこんな大局面、途中で投げ出すかって。第一、エリザベートを好きなこともあるし、俺はエリザベートを守りそして魔王を倒したいと思うことに変わりはない」
「――ルビアス」
「エリザベートをあんたから奪うよ」
「やれるもんならやってみろ、ルビアス」
二人は不敵に笑った。
互いに仲間として許しあえたし戦うには息が合う。
恋敵だが仲間だから二人はともに戦う。
かつては戦場で敵同士だったクラウドとルビアス。
いつの間にか男同士の信頼の絆が出来ていた。