表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

142/217

第百四十三話 使命があるからこそ

 クラウドは木によりかかりながらエリザベートを胸に抱く。

 ――エリザベートが愛しくてたまらない。


 互いの体温があたたかい。


「エリザベート」

「……クラウド」


 ずっとエリザベートと口づけ合って、腕に抱きしめて強く胸に抱きとめていたい。

 エリザベートとずっとこうしていたい。

 抱きしめ合っていたい。

 愛を確かめ合って、互いの存在を肌で感じて。


 クラウドはエリザベートが蕩けそうなキスをした。

 エリザベートは応えるようにうっとりとした表情を見せ、クラウドの口づけを受けると、彼は甘い痺れに酔いそうになる。


 二人でもっともっと深く愛し合って心の奥まで満たし合いとことん深めあえたら……。


 エリザベートもクラウドとずっと二人でこうしていたかった。


 私たち……恋人同士になったんだもの。


 エリザベートは俺だけのものだ――。


 クラウドはエリザベートの頬を男らしく大きな両の手で包み込んで見つめ合った。

 エリザベートの頬骨をクラウドの節くれだった長い指がすっとさする。

 二人の視線はぶつかり合って絡んで交わり、真っ直ぐの情熱がはらんでこもっていた。


 ――だけど、私たちには使命があるから。

 ――だが、俺たちには使命がある。


 二人はもう一度口づけて見つめ合い、その奥の輝きでお互い分かっていた。


 ――だからそう、二人には、やるべきことがこれから成すべき大義があるから。


「なあ? 俺はこれからはいつでもお前に、遠慮なくキスしてもいいんだよな、エリザベート?」


 クラウドがエリザベートの耳元で甘く囁くとエリザベートの顔はボッと真っ赤になった。


 エリザベートが俯いたのを指でそっと顎を掬い上げて、クラウドは見つめた。


「俺を選んでくれてありがとう、エリザベート。お前を心の底から愛しているよ」

「……クラウド」

「俺がお前を守る」

「クラウド。……あ、ありがとう」

「全身全霊をかけて俺がお前のことを守るから、存分に戦え、エリザベート」

「うん……」


 クラウドから囁かれる言葉は甘くて、強くて男らしい。

 エリザベートをドキドキとクラクラが襲う。

 言われ慣れていない甘いセリフが、エリザベートの胸をときめかせ熱く焦がしていく。


 まだ微かな戸惑いと、恥ずかしさも共に――。


「私、今、すっごく恥ずかしいっ……」

「はははっ、可愛いなあ、エリザベート。お前はどうしてそんなに俺の心を甘く疼かせる? ふふっ、……俺だって恥ずかしいんだ」


 クラウドは笑ってもう一度エリザベートに口づけた。


 エリザベートの手をぎゅっと握りしめて「行こう」と言ってから二人で歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ