第百四十三話 使命があるからこそ
クラウドは木によりかかりながらエリザベートを胸に抱く。
――エリザベートが愛しくてたまらない。
互いの体温があたたかい。
「エリザベート」
「……クラウド」
ずっとエリザベートと口づけ合って、腕に抱きしめて強く胸に抱きとめていたい。
エリザベートとずっとこうしていたい。
抱きしめ合っていたい。
愛を確かめ合って、互いの存在を肌で感じて。
クラウドはエリザベートが蕩けそうなキスをした。
エリザベートは応えるようにうっとりとした表情を見せ、クラウドの口づけを受けると、彼は甘い痺れに酔いそうになる。
二人でもっともっと深く愛し合って心の奥まで満たし合いとことん深めあえたら……。
エリザベートもクラウドとずっと二人でこうしていたかった。
私たち……恋人同士になったんだもの。
エリザベートは俺だけのものだ――。
クラウドはエリザベートの頬を男らしく大きな両の手で包み込んで見つめ合った。
エリザベートの頬骨をクラウドの節くれだった長い指がすっと擦る。
二人の視線はぶつかり合って絡んで交わり、真っ直ぐの情熱がはらんでこもっていた。
――だけど、私たちには使命があるから。
――だが、俺たちには使命がある。
二人はもう一度口づけて見つめ合い、その奥の輝きでお互い分かっていた。
――だからそう、二人には、やるべきことがこれから成すべき大義があるから。
「なあ? 俺はこれからはいつでもお前に、遠慮なくキスしてもいいんだよな、エリザベート?」
クラウドがエリザベートの耳元で甘く囁くとエリザベートの顔はボッと真っ赤になった。
エリザベートが俯いたのを指でそっと顎を掬い上げて、クラウドは見つめた。
「俺を選んでくれてありがとう、エリザベート。お前を心の底から愛しているよ」
「……クラウド」
「俺がお前を守る」
「クラウド。……あ、ありがとう」
「全身全霊をかけて俺がお前のことを守るから、存分に戦え、エリザベート」
「うん……」
クラウドから囁かれる言葉は甘くて、強くて男らしい。
エリザベートをドキドキとクラクラが襲う。
言われ慣れていない甘いセリフが、エリザベートの胸をときめかせ熱く焦がしていく。
まだ微かな戸惑いと、恥ずかしさも共に――。
「私、今、すっごく恥ずかしいっ……」
「はははっ、可愛いなあ、エリザベート。お前はどうしてそんなに俺の心を甘く疼かせる? ふふっ、……俺だって恥ずかしいんだ」
クラウドは笑ってもう一度エリザベートに口づけた。
エリザベートの手をぎゅっと握りしめて「行こう」と言ってから二人で歩き出した。




