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第十三話 収穫

「ただいま、カトリーヌ」

「ああ。お帰り! ジス!」


 やけに明るいカトリーヌの様子にジスは胸を打たれた。

 こういう時のカトリーヌは無理をしている。

 妙に張り切ったり。

 笑顔がひきつっていたり。

 じいさんが死んだ時も一晩泣いただけで歯を食いしばっていたなあ。

 まあ泣いてる場合じゃないし追っては次々とやって来て。

 そんな暇もなかったから。


 血眼ちまなこになって漆黒の勇者エリザベートを探す魔王と魔王軍に何度殺されそうになったか。


(……俺は甘いのか?)


 しかし、聖獣ジスは待つことにしたのだ。

 その心の傷が癒えてカトリーヌがふたたび自ら漆黒の勇者エリザベートを名乗る日を――。


「今日はオレンジ芋の収穫日よ。ジス」

「ああ。楽しみだなあ。あの芋は美味い」


 一生懸命育てたオレンジ芋。ふかすととろりとした食感で。オレンジ色で。焼くとホクホクもしたりして。


「なあ? カトリーヌ」

「んっ?」


 三角巾と農作業用の茶色い上下の服に着替えたカトリーヌは、気合いを入れて農園に向かう。

 戦ってきた剣に代えて、今は大事な道具のスキやクワを持っている。


「あいつはまた来るぞ」

「やれやれね」


 あいつとは無論ルビアス王子のことだ。


「気持ちを切り替えましょう、ジス。さあ、収穫よ!」


 カトリーヌはいろいろな思いを振り払うようにクワを振りかぶった。


 収穫の喜び、農園を営んで報われる瞬間のひとつだ。


「どうか豊作でありますように」


 土をいじり作物を育てる、野菜や果物を作る農業に真摯に向き合ってきた。

 今までやったことないこと、思い通りにいかないことばかりだったけど、作物を育てるのは楽しい。

 それは実りがあるからだ。

 それから、自分の育てた農作物を喜んでくれる人がいる。自分が丹精込めて育てた野菜も果物も食べて美味しいと言って笑顔になる。


 カトリーヌは単純にすごくそれが嬉しい。

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