第百四十話 俺が好きか?
「はあ、クラウドはすごいね」
エリザベートはランタンを手に取りながら称賛の思いと表情でクラウドを眩しそうに眺めて見つめていた。
「ハハハッ、惚れ直したか?」
クラウドはエリザベートに褒められた照れ隠しに、少しおどけて言ってみたのだ。
「えっ。……うん」
エリザベートの意外に素直な反応に驚いた。
クラウドはその反応を受けて、ほんの少し、僅かだけエリザベートの心に踏み込むことにした。
「エリザベート、お前さ。……聞くがな、ちょっとはお前は俺のことが好きになったか?」
「あっ、あの……」
エリザベートは真っ赤になってうつむいた。
クラウドは気づいていた。エリザベートのランタンを持つ手が微かに震えている。
「エリザベート、お前を戸惑わせていたら、すまん。なあ? 思い過ごしかもしれんが、俺を見つめるお前の表情つきが変わってきた気がしてるんだが、どうだ?」
「――えっ? 私が? ……あの……」
「エリザベート、お前の瞳が俺を見つめてる。切なげにお前の視線が俺を追いかけてくる」
エリザベートが自分に関心を持ってくれたのだと思った。
クラウドは、エリザベートの心の内に一歩進んだんじゃないかと感じた。
今なら通い合える気がする。
互いの気持ちが、近づいていく。
俺たちはたぶん駆け寄って、寄り添え合える。
「なあ? 俺の勘違いか?」
「違うと思う」
「それじゃあ、自意識過剰かな?」
「違う……と思う」
――ずるいよっ! ……ずるい。
クラウドが鋭くってずるい。
エリザベートはあたふたと慌てふためいた。
みるみるとエリザベートの顔が真っ赤に染まっていく。
「なあ、認めろよ、エリザベート。……お前は。お前はさ、俺のことが好きだって――」
「……クラウド」
エリザベートは肯定の沈黙をした。