第百三十六話 エリザベートとララの船
エリザベートの願いはあっさりとララに受け入れられて驚いた。
「ララ。貴女にしか頼めない。ララにね、お願いがあるの。大事な海賊船に壊れてしまう危険が伴うお願いだけれど。どうか魔王ヴァーノン討伐の為に……ララの船を、大切な海賊船を私たちに貸してほしいの」
「ああ、いいよ」
「いいのっ!? ……ああ、良かった。ララ、ありがとうっ!」
「エリザベート。あんた、もしかしてこの私が反対するとでも思ったのかい? 大魔王が復活したんだ。人間世界が破滅するかもしれないって危機に、若い身空で勇者の責務を担うあんたからの頼みを姉妹同然の私が助けると約束した絆を反故にするわけがないだろう?」
エリザベートはララのチャーミングな笑顔にほっと胸をなでおろした。
――だが、続くララの言葉にエリザベートはびっくりした。
「それじゃあね、エリザベート。大事な海賊船はアンタにタダで貸す。フフフッ! 条件は私を連れて行くことだ」
ララはニコッと微笑みながらもエリザベートの瞳をしっかり見つめる。
「ええっ?!」
その場にいる者は誰もが驚いてしまった。
ただ一人、ララをよく深く理解するララの義理の兄ソリュウ以外は――。
「じゃあね、そういうわけだから。義兄さん、あとのことはよろしく」
「ああ、わかった」
こちらもあっさりだ。
反対もなにもない。
二つ返事で受け入れられている。
ララが言うなら邪魔しないという感じだ。
「ああっ、危険なのに。なんてこと? ララが私たちの旅についてくるなんて」
エリザベートはララのことが心配で仕方がなかった。
「ハハハッ! エリザベート、アンタ私を誰だと思ってるんだい? 元は泣く子も黙る大海賊ララ船長だよ」
なかば強引に、ララも危険なエリザベート達の魔王討伐と冒険旅についてくることになった。