第百三十五話 エリザベートと魔王の愛撫
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エリザベートは聖獣ジスと二人でずっと考えてきた。
作戦は二人きりで考えなくてはならなかった。
孤独な戦いだった。
援軍は来ない。
ランドン公国大地軍はほぼ全滅。
何名かの瀕死状態の兵士が地面に横たわるのみとなった。
あとの兵士は戦場に散った。
ランドルフが伝えてきた魔王の軍隊の情報はどこの筋かは分からなかったのに信じきって隊長は確かめもせず、偽の情報に躍らされてしまった。
「なんでこんなことをしたの?!」
黒の魔法使いランドルフはなにも答えなかった。
ランドルフがその情報源にただ騙されたとは思わなかった。
なぜなら彼は慎重で賢くなによりも勘が鋭い。
鼻が利くのだ。
エリザベートの率いる軍隊の騎士団のみが残るという悲惨な戦いだった。
ランドルフとは決別していた。
これ以上不確かな情報で惑わさられたくなかったからだ。
信用が出来なくなってしまった。
そして魔王ヴァーノンの前で次々と兵士たちは散って行った。
エリザベートと聖獣ジスだけが残った。
魔王ヴァーノンは私を欲しがっていた。
残虐な目はグルグルと色を変え、エリザベートを恐怖で支配しようとした。
邪悪で汚わらしき腕に抱きすくめられた瞬間にエリザベートは魔王の背中を聖剣エクスカリバーでその力の限り突き刺した。
エリザベートの身体には魔王のおぞましき愛撫の感触が残る。
震えが止まらない。
聖獣ジスの背中に乗りながら凍っていく魔王の姿を見、いつまでも続く魔王の断末魔を聞いた。
耳をふさいでも聞こえる魔王の叫びはエリザベートに勝利を知らせるとともに、忌まわしく禍々《まがまが》しい思い出にもなった。
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