表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

133/217

第百三十四話 クラウドと白の魔法使いカルラ

 クラウドは海岸を歩きながら、船旅に備えるべき物を思案していた。

 必要な物資、食料に武器に薬草や水……。

 あとは……話し合いだ。


 それから作戦。

 航路や軍事作戦やルーシアスへの到達日数を立て……。

 もっともっと俺たち仲間は、あらゆる場合に備えて話し合う機会を設けねばなるまい。


 とくに指揮官の要であるエリザベートとは、私情抜きにでももう少し密に話を詰めなければならないと思っていた。


 ――北寒の地の果たしてどこまで船で行くつもりなのか。


 たぶん最短で北の大地ルーシアスにエリザベートは着きたいから船旅を選んだのだろうが、魔王がどこまで手を伸ばしているか分からない。

 海上戦になれば不利になるのは目に見えている。


 クラウドはちゃんとした計画とエリザベートの作戦を聞きつつ、皆からも意見を出させなくてはならないと思っていた。


 あった焦りが、大きくなる。


 ――俺たちは仲間になって日が浅い。


 話し合いが足りていないことにクラウドには不安と強い危機感が渦巻いていた。

 愕然とすら、している。

 信頼して仲良くはなって思いやるのはいいと思うが、互いにもっと切磋琢磨して力を高めて行かなければ、確実に誰かが死ぬ。


 海岸の岩に腰掛けてクラウドは思いにふける。

 今はいい。

 のんびりとまるで魔王が攻めてくる気配も緊迫もない。

 だがこれからどうなる?


(俺はナターシャを守れなかった)

 いくら国のために将軍として働こうが、戦績をあげようが、一番大切な者は失った。

 一番守ろうとした者のそばにいるべきだった。


 エリザベートは守らねばならぬ。


 クラウドはエリザベートとのあの熱い口づけを想い出せば想い出すほどに切なくて身がうずく。

【エリザベートをいっそ抱いてしまえばいいのに】

 ランドルフはイヤミな奴だが、あいつの言葉は不意に刃みたいに突き刺さる。

 己の欲望と合致してしまうから、始末が悪い。


 エリザベートは魔王を一度は倒している。

 その時の戦いの様子を聞きたい。

 魔王の弱点はなんだ?

 もっとしっかり話し合いをしていかねばならない。


 クラウドは愕然とした。

 そうだな。

 まだ全然、俺はエリザベートを知らないんじゃないか。

 俺のことも伝えてはいないじゃないか。

 知りたいし知ってもらいたい。

 妻ナターシャを亡くしてから初めてそう思える相手に出会った。

 エリザベートを知りたい。

 俺のことを知ってもらいたい。


 のんびりしてる場合じゃねえな。

 急ぎ、取り組むべきだ。


 

 クラウドが座る岩の横にさきほどの少年がやって来た。

(白の魔法使いカルラだったな)

 クラウドとカルラの目線が合う。


「俺を鍛えてくださいっ、クラウド!」


 カルラの突然の申し出に、クラウドは真意を見出そうとした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ