第百三十一話 黒の魔法使いランドルフと白の魔法使いカルラ
黒の魔法使いランドルフは静かに怒り狂っていた。
――なに生意気なクソガキがボクのアリアに手を出そうとしてんだ。
(へえ。返り討ちにしてやる)
誰がどう見てもランドルフは怒っていた。
「ボクがやる。このボクが君に! カルラに直々に手取り足取りみっちりと、付きっきりでていね〜いに魔法を教えるよ」
ランドルフはわなわなと体を震わせ、怒りながら笑うという怖ろしい表情だった。
ルビアス王子はそっと小声でエリザベートに聞いた。
「エリザベート。……まさかアリアさんとランドルフの二人は付き合ってるの?」
「うん。そうみたい」
「そ、そうか……知らなかったな」
いつの間に二人はそんな関係になったんだろうか。
ルビアスは驚きを隠せない。
――どうなってんだ、まったく。
ここで白の魔法使いカルラがムッとした表情で、黒の魔法使いランドルフに鋭く言い放つ。
「やだ。お前みたいな性格が悪そうな男」
フッ……。
クラウドと聖獣ジスが同時に笑い出しそうになってこらえた。
クラウドはおかしくて吹き出してしまいそうで、そっと席を外した。
(あー、これは、とんでもない子が来たかもしれない)
へらず口で賢く皮肉屋の黒の魔法使いランドルフ、ある意味誰もが敵に回したくない彼に立ち向かって噛みつきそうな少年カルラに、エリザベートたちは目を見張った。
これは嵐の予感――。
エリザベートたちは思った。
当のアリアはなにがなんだか分かっていないみたいだった。
ぽやんとした表情で首を傾げて眺めている。
まさかランドルフとカルラが自分を巡って火花を散らしているとは、アリアには思いもよらなかった。