第百三十話 ともに旅立とう
「ララ。ところでそちらの二人は?」
ルビアス王子はずっと気になって聞いてみた。
ララの両隣りにいる人達。
「こっちはカルラで16才でジイさんは大型帆船の船長だよ。エリザベートから聞いたから連れてきた。カルラは防衛魔法を習うんだろ? こっちは私の義理の兄のサリュウだ。私は一人っ子だったからね、親が兄妹を作ってあげたいと海賊仲間の孤児を引き取ったんだ。普段は農園の経営の財務を任せているんだ」
「よろしく。俺はララが出掛けている間は海賊達をまとめる役に徹しています」
「よろしくお願いします。ララにお兄さんがいたんだね」
「兄さんは寡黙で人見知りな質でね。恥ずかしがり屋だからあまり人前には出たがらないんだよ」
「むっ……、余計なことを……」
ララの義兄サリュウは恥ずかしそうに俯いた。
エリザベートには兄妹がいないからか余計に、ララとサリュウの仲が良さそうな会話を聞いて、やり取りを見つめ微笑ましく感じていた。
その間、カルラはエリザベート達をじっくり観察していた。
「そっかじゃあ、あなたがゆくゆくは定期船の船長になるの? 防衛魔法を習いに来るのね?」
聖女アリアが少年に聞いた。
カルラはアリアをまじまじと見つめ、顔を真っ赤に染めた。
エリザベートが帆船の船長に頼まれたのは、定期船のこれから先の船旅を助け航路をより安全に行くためには必要不可欠な白魔法使いの孫の育成だったはず。
だが、なんとカルラは拒否したのだ。
「俺はじいさんみたいに船乗りにはなりたくない!」
――えっ? と一同が思った。
そのために魔法を習うんじゃないのか?
「俺は防衛魔法を習うならアンタがいい。アンタのことが気に入った。それで一緒に航海したい。冒険がしたい! 窮屈で狭い島から世界を見に行くんだ。旅立ちたいんだ。オワイ島から」
「窮屈だなんて……。オワイ島はすごく素敵なとこなのに」
「勇者エリザベート、世界中を旅したあなたは分かっちゃいない。定期船は決まりきった航路を往復するだけ、俺の生き様は誰も決めない、自分で決める。先の見えない旅がしたいんだ」
「まあ、そんな時期もあるかもだけど、みんなのための定期船の船長はとても勇敢で大事な仕事よ? 陸路が無い海を行くには、なくちゃ困るもの」
エリザベートが諭すように言ったが、カルラの聞き入れている様子はない。
年頃だから特有の反骨心、耳に痛いことや年上のアドバイスは素直に耳に入れたくない、カルラは意固地になっている。
エリザベートもその場の誰もが分かっていた。自分達も通ってきた道だ。
生意気でたぎっていた、常に不満や怒りや炎を抱えて生きている時。
カルラ、……反抗期だからか。
それから少年はまっすぐに聖女アリアを見つめた。
「すげえ白の癒やしの波動をアンタから感じる、俺はアンタに習いたい」
まさかのアリア御指名にランドルフが怒ったことは間違いない。