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第百二十八話 びっくりな縁

 ルビアス王子は思い出していた。


「はあぁっ……。ララ、どうして? 俺はララ、……お前しかいらなかったのに」

「――兄さん」


 イルニア帝国王城で、珍しくジャン王子は落ちこんでいた。

 いつも溌溂はつらつとして優雅で勇ましくいたのに、顔はすっかり痩せこけてる。


 廊下の窓のへりで兄のジャンが腰をよりかけて、虚ろな瞳で外を眺めていた。


「兄さん。兄さんはなにがあったんだろう? そんなに何を悲しんでいるの?」


 ジャン兄さんはいつでも、ルビアス王子の憧れだ。

 血気盛んで意気揚々と剣を振るい、兵や人々の心を掴み動かす気概と人を魅了する輝きがあった。

 

 この時のルビアス王子はまだまだ子供で年の離れた兄の悩みがぜんぜん理解できていなかった。

 美人で笑い声が大きくて底抜けに明るい、面白いあのお姉ちゃんはもう来ないんだ。


 ルビアス王子はちょっと寂しかった。

 それから、兄のあんな顔を見るのも初めてだった。

 ……すっごく悲しそう。


 ルビアス王子は今でも、兄のジャンの憂い顔が頭から離れない。


「アハハハッ! まあっ、びっくりなえにしだね。またアンタに会えるとは思わなかったよっ! まさかルビアス、アンタがエリザベートの仲間になってるなんてさ、驚きだねぇ。しかもだ。イルニア帝国からうーんと遠くのこのオワイ島にはるばるやって来るだなんてね。ああ、そりゃあびっくりしたさ。嬉しいよ、ルビアス。私とアンタがこの広い世界でまた再び出会うなんてさ」

「ララ、元気そうで良かった」

「ハハハッ! アタシは元気そのものさ」


 ララの豪快な笑いが、エリザベートの農園に楽しげに響いていた。

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