第百二十五話 恋は盲目でいい
クラウドは盛り上がる女性陣を眺めていた。
恋は盲目ぐらいでちょうど良いのかもしれねえなあ。
そう思いながら。
エリザベートはまだ少女だ。
いくら漆黒の勇者だとしても。
ふだんは大人顔負けの戦士だとしても。
戦い抜きにしたらまだ子供じゃねえか。
屈託なく笑うとあどけない少女に俺は恋してしまった。
本当は。抱きしめてキスして、激しく交わしたらその先だって俺のものにしたい。
こんなに焦がれて目の前にはエリザベートが居るのに、手を出せねえ。
大人って枠はつくづくまあ、なんだな、我慢が必要ってことだ。
イルニア国の鷲ルビアスぐらいなら、多少強引にできるかもしれないよな。
若くて純粋で、女のことを含めてなにもかもを知り尽くしていないのが、かえって強みなような気がしてる。
まあ、あいつも我慢してんのか。
「俺はまだまだ指導には向いてないから。エリザベートが殻を打ち破るアドバイスができるなら、クラウドに任せる。俺の剣を使ってくれ」
そういうルビアス王子は力強くて真っ直ぐな瞳を俺に向けてきた。
エリザベートに向ける優しさと気遣いをもっている。
とにかく恋しちまった以上、相手を悲しませちゃあいけないなと、エリザベートにクラウドは心に誓いをたてていた。
エリザベートに抱く愛の激しさと求める強さはぐっと我慢して。