第百二十四話 いつ気づいたの?
アリアは恥ずかしげにモジモジとしていた。
「いつ気づいたの? ランドルフに恋してるって」
「さっ、さっきなんです。……今さっき。自分でもビックリしちゃっていまして……。私! どうしたら良いのでしょう」
アリアは顔を真っ赤っかにしながら答える。
「……さっきって。ああ、そういや桜貝を拾っていったなあ、アイツ。あれはアリアさんにあげるためだったのか」
「ええっ、そうですっ! それがこれです」
桜貝はランドルフの魔法で綺麗なブレスレットに仕上がっていた。
ほんわかとした雰囲気のアリアには、ふわりと淡い色の可愛らしいブレスレットはよく似合っている。
「わあ、ふふっ。とっても綺麗だね」
「はいっ! 私、私ですね、男の人から初めてこんなプレゼントをもらって。もぉ、嬉しくって、嬉しくなっちゃってですね。……あのですね。それにランドルフさん、前々から私に優しいんです。それでさっき『君のこと好きになったからボクだけ見て欲しい』って! そう言われたんです」
(ランドルフ! 本気でしょうね? 本気じゃなかったらただじゃおかないわよ)
(あの野郎。本気か? 本気じゃなかったらどうしてやろうか)
エリザベートとクラウドはほぼ同時にほぼ同じことを考えていた。
こんなに純粋で初心な子を騙したりしてたら許さないわよ。
「うん! 私、二人のこと応援するっ!」
エリザベートはニコッと微笑んでアリアの両手をがっしりと握っていた。
アリアの顔が嬉しそうにパアッと花が咲くように綻ぶ。
「おいおい、本気かよ。よく考えてみろよ? ランドルフは山賊団でアリアさんの荷物奪って誘拐しようとして、しかもあの野郎は事もあろうにアリアさんで一儲けしようとしてたんだぞ!」
クラウドの説得もむなしく響く。
女子同士エリザベートとアリアの二人だけで、わあわあキャーキャーと盛り上がっているのだ。
アリアとエリザベートの二人には、クラウドの忠告など1ミリも聞こえてはいなかった。
「エリザベートさん! ホントですか?! 応援してくれますか?」
――やれやれ。
恋は盲目だな。
よく言ったもんだぜ。
顔を片手で覆うクラウドは、ハアーッと深い息をつく。
――まったく……。
先が思いやられる思いだった。